伊達 思い出のコートで引退会見「テニスと出合えて良かった」

[ 2017年9月8日 05:30 ]

有明コロシアムのコートで、引退会見を行う伊達
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 2度目の引退を表明した女子テニスの伊達公子(46=エステティックTBC)が7日、東京・有明コロシアムのセンターコートで引退会見を行った。96年の最初の引退後、08年に競技復帰してから約9年半。「こんなに幸せなアスリートもそういない」と充実感に満ちた笑顔で現役生活を振り返った。主催者推薦で出場するジャパン女子オープン(11日開幕、東京有明テニスの森公園)が現役ラストマッチとなる。

 テニスの神様から伊達への気の利いた贈り物だったかもしれない。ジャパン女子オープンは有明の場外コートが会場で、本来コロシアム内のセンターコートは使用しない。だが、この日の練習中に雨が降った。伊達は急きょ室内のコロシアムに移り、「思い出の詰まった場所」でボールを打つことができた。

 「もうコロシアムのコートには立てないと思っていたが、やっぱり気持ちよかった」

 終始、笑顔だった引退会見も伊達の希望で同コート上で行われた。96年4月のフェド杯では、ここで当時世界1位のグラフ(ドイツ)を破り、その2カ月後にはグラフとウィンブルドンで2日がかりの準決勝、その15年後には40歳にして再びウィンブルドンのセンターコートに立ってV・ウィリアムズ(米国)と激闘を演じた。有明とウィンブルドンを結ぶ線に連なる3試合。それを伊達は思い出に残る試合に挙げた。

 今後のプランは白紙だが「これからも常に自分の隣にテニスがある人生にしていきたい」と明かした。世界4位までいきながら、ツアー転戦やテニスそのものに嫌気が差し、「疲れ果てた」とプロ生活8年、26歳で早々引退した前回の姿はない。「一つ一つがチャレンジの連続だった」という最初の現役を超える長さとなった復帰後のキャリア。「本当に本当にテニスと出合えて良かった」と伊達は言った。相手やランキングだけでなく、年齢との闘い、ケガとの闘い。その全てがテニスへの愛を育み、笑顔でコートに別れを告げるためのものだった。

 【伊達思い出の試合】

 ☆96年フェド杯準々決勝ドイツ戦(VSグラフ=○7―6、3―6、12―10)前日の試合で左足を痛めていたが、ホームの有明コロシアムで当時世界1位のグラフと3時間25分の大熱戦。日本人で初めて世界1位を破った歴史的白星となった。

 ☆96年ウィンブルドン準決勝(VSグラフ=●2―6、6―2、3―6)当時はまだセンターコートに屋根がなく、第2セットを取り返した絶好のタイミングで日没順延の裁定。翌日はNHKが7時のニュースを飛ばして生中継したが、3―6で落として日本人初の4大大会決勝を逃す。

 ☆11年ウィンブルドン2回戦(VSV・ウィリアムズ=●7―6、3―6、6―8)グラフ戦以来15年ぶりのセンターコートで、2年前に新設された屋根を閉じての試合。40歳の伊達は初対戦の相手のパワーに巧みに対抗したものの、2時間56分の熱戦の末に惜敗した。

 《1回戦は12日、左膝と肩不安も》伊達の1回戦は12日に予定されている。今大会は全米オープンで4強入りしている世界16位のキーズ(米国)ら海外勢のほか、大坂や日比野ら日本勢も多数出場予定。対戦相手は9日に抽選で決定する。昨年手術した左膝に加え、「8月上旬には日常生活に支障が出るほど」だったという肩の不安も抱え、万全ではない。「見えない力が最後に働いてくれると信じて当日を迎えたい」と祈るように語った。

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