ウルフ金!ベイカー後輩21歳、先輩が倒したリオ決勝“再現”

[ 2017年9月3日 05:30 ]

柔道世界選手権第6日 ( 2017年9月2日    ハンガリー・ブダペスト )

男子100キロ級決勝 ジョージア選手(下)に勝利し、優勝を決めたウルフ・アロン
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 3階級が行われ、男子100キロ級のウルフ・アロン(21=東海大)が決勝でリパルテリアニ(ジョージア)を破り、初出場初優勝を飾った。男子重量級は100キロ級の羽賀龍之介(26=旭化成)、100キロ超級の王子谷剛志(25=旭化成)、原沢久喜(25=日本中央競馬会)がいずれも3回戦までに敗退。メダルなしの危機を新エースが救った。女子78キロ超級の朝比奈沙羅(20=東海大)は決勝で于頌(中国)に敗れて銀メダルだった。

 原沢が初戦で敗れ、羽賀、王子谷もが3回戦までに消えた。後がなくなった男子重量級を救ったのは、21歳、勝負度胸満点の新エース。激闘を物語る血に染まった白い柔道着のウルフは「本当に目標としてきた大会。こういう結果になって最高です」と達成感に浸った。

 決勝の相手は1階級下の90キロ級でリオ五輪銀メダルを獲得したリパルテリアニ。リオの金メダリストは東京・講道館にある春日クラブ、東海大浦安高、東海大と背中を追ったベイカー茉秋だ。何度も見返したリオ決勝のVTR。「内股が効かない選手。ベイカーさんは大内刈りで勝った」と相手の特徴は頭にインプットされていた。

 1分すぎ、そして残り10秒と指導をもらって追い込まれたが、「3つもらわなければ負けない。先に2つ取らせて追い上げようと思った」と冷静だった。自慢のスタミナを生かし、ゴールデンスコアの延長27秒、内股と見せかけての大内刈りがさく裂。先輩と同じ技で世界の頂点に立ち「体が反応した」と振り返った。

 今年4月の選抜体重別選手権では、羽賀との12分14秒にも及ぶ死闘を制した。無差別で行われる全日本選手権でも、敗れたが決勝で王子谷と7分20秒の熱戦。100キロ級としては決して大きくない体格をカバーするため、無尽蔵のスタミナを蓄えてきた。普段から畳の上での稽古の後、ローイングマシンをこいで筋持久力を強化。限界までを5セット行うチンニング(懸垂)は腕の筋持久力強化につながり、外国人との組み手争いで負けないかいな力を手に入れた。

 かつては男子の井上康生監督、鈴木桂治コーチらが引っ張った伝統の階級。世代交代を印象づけ、その系譜を受け継ぐ新エースは「このまま突っ走り、20年も必ず優勝します」と堂々宣言した。

 ◆ウルフ・アロン 1996年(平8)2月25日、東京都生まれの21歳。6歳の時に講道館の春日柔道クラブで競技を開始。東海大浦安高では2年の時に1学年上のベイカー茉秋とともに団体戦で3冠を達成。14年4月に東海大に進学し、15、16年の講道館杯を2連覇。今年4月の全日本選抜体重別選手権では2連覇を達成した。得意技は寝技。父が米国出身のハーフ。1メートル81。

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2017年9月3日のニュース