須崎 初出場18歳JKが女王、伊調馨以来「東京で金」宣言も

[ 2017年8月26日 05:30 ]

レスリング世界選手権第4日 女子48キロ級決勝   須崎 Tフォール ブク ( 2017年8月24日    フランス・パリ )

世界レスリング女子48キロ級を制し、日の丸を掲げる須崎(AP)
Photo By AP

 女子4階級が行われ、48キロ級で須崎優衣(18=東京・安部学院高)が初出場初優勝を飾った。高校生女王は02年大会の伊調馨以来。50キロ級で行われる東京五輪に向け、リオ五輪金メダルの登坂絵莉(23=東新住建)との争いも激化しそうだ。60キロ級では川井梨紗子(22=ジャパンビバレッジ)、69キロ級は土性沙羅(22=東新住建)が大会初優勝。53キロ級の向田真優(20=至学館大)は銀メダルだった。前日に行われた55キロ級と合わせ、日本女子は8階級のうち金4個を含む6個のメダルを獲得した。

 ニューヒロインの登場はいつだって鮮烈だ。5試合中4試合でテクニカルフォール勝ち。文句のつけようがない勝ちっぷりで女子高生が最強の座を射止めた。

 「世界チャンピオンになりたくて、厳しい練習もやり切った。今は自分の手元にあってうれしい」。元世界女王でエリートアカデミーの恩師である吉村祥子コーチを肩車して1周。さらに日の丸を背負い1周。あふれる喜びでマット上を駆け回った。

 中学2年生から日本オリンピック委員会が有望な中高生を寄宿制で育成するエリートアカデミーで練習してきた。卓球の平野美宇や張本智和ら仲間の活躍に刺激を受け、今大会は「現役生で初めてシニアの世界選手権で金メダルを獲る」ことが目標だった。

 そのための準備も怠らなかった。5月のアジア選手権では、優勝しながらもグラウンドで得点できなかったことを課題として持ち帰り、アンクルホールドやローリングを徹底的に練習した。序盤に投げを食らって4点を先制された決勝も「自分の形として出せた」と得意のタックルに加えてローリングで次々加点。「アカデミーに最高の恩返しをしたい」という思いを成就させた。

 昨年のリオ五輪を現地で観戦したことで「夢と希望をもらった。東京では自分がそれを与えられる人になりたい」と東京五輪への思いは一層深まった。左足を手術したリオ五輪金メダルの登坂との勝負付けはこれから。来年からは新階級の50キロ級で競い合うことになる。「50キロ級に上がるので筋力を付けて強くなりたい。次の大きな目標は日本代表になって東京で金メダルを獲ること」と堂々と宣言。3年後の主役を誰かに譲るつもりはない。

 【須崎 優衣(すさき・ゆい)】

 ☆生まれ 1999年(平11)6月30日、千葉県松戸市出身。1メートル53。

 ☆レスリング歴 早大レスリング部だった父・康弘さんの影響で7歳から松戸ジュニアクラブで始める。中2からエリートアカデミーに入校。4学年上の姉・麻衣も早大レスリング部に在籍。

 ☆戦績 世界カデット3連覇など中学時代から国内外で無敵。16歳で勝ち進んだ15年全日本48キロ級決勝で入江に唯一の黒星を喫した。その後は再び全カテゴリーで勝ち続け、これで14大会連続V。

 ☆験担ぎ 試合前は炭酸飲料「レッドブル」を飲み、スウェーデン人ミュージシャンのアヴィーチー「Wake Me Up」を聴くのがお決まり。

 ☆趣味 食べ歩きで「おいしいものを検索して友達と食べに行くこと」。好きなお菓子はじゃがりこ、柿の種。

 ▽JOCエリートアカデミー 五輪など国際大会で活躍できるトップアスリート育成のため、08年4月に設立。素質あるジュニア選手が東京・味の素ナショナルトレーニングセンターを生活拠点として、近隣の学校に通学しながら、各競技団体の一貫指導を受ける。中1〜高3までが対象。今年度はレスリング7人、卓球8人、フェンシング4人、飛び込み4人、ライフル射撃5人、ボート2人、アーチェリー4人、計34人が所属。卓球では世界選手権女子シングルス銅メダルの平野美宇、世界選手権男子シングルス8強の張本智和が所属している。

 《高校生Vは02年大会伊調馨以来》女子48キロ級の須崎は18歳1カ月で金メダルを獲得し、高校生としては02年大会63キロ級の伊調馨(中京女子大付高、現至学館高)以来の快挙となった。日本協会によると、シニア大会出場は年齢制限を設けており、その年の12月末で18歳になっている必要がある。世界連合の現行ルールに合わせると、女子では99年大会62キロ級で世界一に輝いた17歳10カ月の正田絢子に次ぐ2番目の若さになるという。年齢制限の適用以前には87年大会47キロ級で15歳8カ月のアン・ホルテン(ノルウェー)、日本勢では91年大会47キロ級で17歳0カ月の山本美憂が世界女王になった。

続きを表示

この記事のフォト

2017年8月26日のニュース