「勝利」「休養」「強化」三兎を追う日本代表 ジョセフ氏の手腕に期待

[ 2017年7月28日 10:15 ]

日本代表のジェイミー・ジョセフHC
Photo By スポニチ

 現在、プレーオフが進行中のスーパーラグビーだが、日本のサンウルブズは15日の最終第17節ブルーズ戦(秩父宮)をもって、今季の全日程を終了した。ご存知のように試合はサンウルブズが48―21で大勝利。ニュージーランド地区最下位(5位)に沈み、6季連続でプレーオフ進出を逃したブルーズではあるが、それでも7勝1分け7敗の勝ち点37は、リーグ全体(18チーム)では8位に当たる。試合内容を含めて、サンウルブズにとっては掛け値なしに素晴らしいゲームだった。

 勝因の一つに、最高気温33度まで上がったプレー環境にあったことは論を待たない。過酷な条件下でも80分間集中力を切らさず、どん欲にプレーしたサンウルブズに対し、ブルーズはスタミナ温存のためか、キックオフ直後から力をセーブしていたように見えた。それでも前半の終盤には疲れが見え始め、後半は途中出場のニュージーランド代表フランカー、ジェローム・カイノがシンビンで一時退場。この直後にサンウルブズが逆転し、さらに突き放した。

 ただ、2勝13敗という結果に目をつむるわけにはいかない。まだ2年目、参入1年目の昨季に比べれば勝ち星が1つ増えたじゃないか、という見方もあるが、亀の歩みでは2年後のW杯で結果を出せないのは自明だ。

 今季は日本代表のジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチがチームジャパン2019総監督の立場で、支配下選手の出場試合をコントロールするという新たな試みがあった。トップ選手の年間試合数を30数試合に制限し、日本代表戦でパフォーマンスを最大化することが目的。フッカー堀江翔太、SH田中史朗(ともにパナソニック)が第2節のキングズ戦後、しばらくチームを離れて休養やコンディション調整に当てたのは、この目的の下にあった。

 しかし今季に限れば、試みは必ずしも成功したとは言い難い。サンウルブズは2勝に留まり、ピラミッドの頂点にある日本代表の6月のパフォーマンスも今ひとつ。選手からも「せっかくプレーの連係やチームの一体感が高まっても、次の試合でガラッとメンバーが変わってしまい、またやり直し」と嘆く声が聞こえてきた。

 象徴的だったのは、5月最後の2試合だろう。その直前、ニュージーランドとアルゼンチンで計4試合を行った海外遠征では、4月14日の初戦のクルセイダーズ戦は3―50と完敗も、続くハイランダーズ戦は15―40、チーフス戦は20―27、ジャガーズ戦は39―46と、結果も内容も尻上がりだった。ところが2勝目の期待が最高潮に高まり、バイウィーク(休養節)を挟んで迎えた5月20日のシャークス戦(シンガポール)。残念ながら17―38の敗戦。同27日、秩父宮にチーターズを迎えた一戦は、7―47というよもやの大敗だった。

 スーパーラグビーでは運営団体が負担する海外遠征の際の移動費は、選手の場合は27人に限られる。試合登録メンバーが23人だから、それプラス4人ということになる。ケガ人が出れば入れ替えは可能だが、いずれにしても海外での4連戦を27人でやりくりするのは大変なこと。その一方で限られた人数の遠征で連係や一体感が高まったからこそ、チーフスやジャガーズを相手に7点差の接戦に持ち込めたというのが、先ほどの選手の見方でもある。

 昨季は全15試合で39人が出場したサンウルブズは、今季は一時的な契約選手を含めて59人の選手を抱え、51人の出場者がいた。2019年を見据え、多くの選手が世界最高レベルを経験できたことは成果。さまざまな組み合わせで選手を起用することも、2年後を考えれば悪いことではない。一方で成功体験(=勝利)なくして、個々の選手やチームの成長は望めない。

 来季は早くも参入3年目。オーストラリア地区に再編されるなどの変化はあるが、最低でも5勝を期待するのは高望みか。そしてそれ以上に望むのが、ジョセフ総監督とサンウルブズの連携強化。単純に日本代表とサンウルブズのメンバー構成を近づけるだけでは、もちろん不十分だ。チームを勝たせ、選手を適度に休ませ、日本代表も強化する。二兎(にと)どころか三兎を追うのは至難の業だが、ジョセフ氏の手腕に期待したい。(阿部 令)

続きを表示

2017年7月28日のニュース