5年で身長が28センチ伸びたNBAルーキーは本当に“地球人”なのか?

[ 2017年7月5日 10:00 ]

ティンバーウルブス入りが決まったパットン(左)
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 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】バスケットボールのポジションは5つに細分化されていて便宜的に番号で呼ばれることがある。1番がポイントガード、2番がシューティングガード、3番がスモールフォワード、4番がパワーフォワードで5番がセンターといった具合。だいたいどのチームでも1番から5番になるにつれて身長が高くなっていく。

 さて先のNBAドラフトでブルズから1巡目(全体16番目)に指名されたクレイトン大(ネブラスカ州)のセンター、ジャスティン・パットン(20=その後ティンバーウルブスにトレード)の身長は2メートル13。米国の身長はフィートとインチで示されるが、彼は通称“セブンフッター(A 7―FOOTER)”と呼ばれる5番のビッグマンだ。しかもティンバーウルブスの関係者よればその身長はまだ伸びていると言うのだから、本当に私と同じ“地球人”なのかとつい思ってしまう。

 驚くなかれ。彼は15歳で高校に入学した時は1番のポイントガードだった。なぜなら身長が1メートル85だったからだ。そこからぐんぐんと身長が伸び始め、クレイトン大に入学した時には2メートル8。しかもまだ成長が止まらなかったために、1年間は適性を見極めるためにプレーをしない「レッドシャツ」扱いとなった。そしてポジションは2番→3番→4番と次々に変わり、最後にたどり着いたのが?5番。彼は昨季平均12・9得点、6・1リバウンド、1・4ブロックショット(平均出場時間は25・5分)というセンターらしい成績を残し、NBA各スカウトの目に留まるようになった。

 かつてブルズで6度のファイナル制覇を達成した“バスケの神様”ことマイケル・ジョーダン氏(54=現ホーネッツ・オーナー)も15歳のとき1メートル75しかなかったが、北カロライナ大に入ったときには1メートル98になっていた。10代後半で伸びた身長は23センチ。そのジョーダン氏とブルズの屋台骨を支えたスコッティー・ピッペン氏(51)もパットン同様、高校時代は1メートル85の1番だったが、大学に入って身長が16センチ伸びて3番となった。

 脳下垂体の異常がもたらす「先端巨大症」を除くと、どうもアジア系民族とアフリカ系民族では成長期が異なっているようだ。パットンは「5つのポジションをやるなんて思いもしなかった。でも5番になるための練習は面白い」と、まだ1年ほどのキャリアしかない“新境地”の開拓に意欲満々。ティンバーウルブスのトム・シボドー監督(59)は「あのサイズでガードの動きができる選手はなかなかいない」と語ったが、5番より1番のキャリアの方が長いのでそれはたぶん当たり前の話なのかもしれない。

 もっともNBA選手としての成長はこれから。どんなに身長があっても世界最高峰のリーグでは容赦のないプレッシャーが襲ってくる。ここ5年間で28センチも背が伸びた期待のルーキー。さてその能力にはどれくらいの“伸びしろ”があるのだろうか? (専門委員)





 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、佐賀県嬉野町生まれ。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。スーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会に6年連続で出場。

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