熱波、山火事、竜巻、雪不足…北米大陸の異変はスポーツ界に影響するか

[ 2017年7月1日 10:00 ]

ミストマシーンの下に立つ男性
Photo By AP

 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】アリゾナ州フェニックスの最高気温が、6月下旬で50度に達した。散歩する犬はやけどを防ぐために“足袋”を履き、市内の歩道にはミストシャワーが設置された。

 ここ数年、常態化している山火事の被害は深刻だ。現在、アリゾナ、ユタ、カリフォルニアなど7州で大規模な山火事が発生しており、多くの住民が避難を余儀なくさせられている。昨年はロサンゼルスのドジャー・スタジアムのスタンドからも遠方にある山々の煙が確認されており、市街地でも安心していられない日々が続いた。

 今年の4月以降、カンザス、ミズーリ、テキサス各州では竜巻が多発。屋根が吹き飛んだ家、壊れた車、途方に暮れる人々の写真というのは、なかなか日本では紹介されないが、自然の猛威は確実に人間の生活を脅かしている。

 カリフォルニア州の水源は地下水ではなくシエラネバダ山脈からの雪解け水。今年1月の積雪量は5年ぶりに回復したが、それまではエルニーニョ現象の影響で最低水準に落ち込んでいた。

 昨年末、米東海岸は猛吹雪に襲われ、NBAやNHLの試合が延期となった。米中西部や南部での竜巻は高校や大学の体育館やスタジアムも破壊。練習場の確保に奔走する指導者も多数いた。

 夏場の山火事は確実にアウトドア・スポーツに影響を与えるため、今後は多くの選手が活動の場を別の地域に求めることになるだろう。ロサンゼルスは2024年の夏季五輪招致をフランスのパリと争っているが、もし当選となった場合には「火」と「水」をコントロールする必要性に迫られる。(東京も同じだろう…)。

 異常気象もずっと続けば、それが当たり前の風景。五輪招致に動く都市は経済的負担が大きすぎるために急減に減少しているが、地球規模で起こっている恒常化した?異常気象は夏季も冬季も財源以上にやっかいな問題になってきた。

 さて米国にとって最大の障害は、一国のリーダーがスポーツ界にも影響を与える「地球温暖化」に対してポジティブな態度を示していないことだろう。確かに米国は現在、世界をリードするスポーツ大国ではあるが、試合や大会が行えない環境に陥ったとき、失うものはとてつもなく大きい。“未来からの使者”がもしいるならば、彼らは「政治的な優先事項を今すぐに変えなさい」と、口をすっぱくして言うかもしれない。

 フェニックスの7月1日から1週間の予想最高気温は43度→42度→42度→42度→43度→43度→45度。テレビのアナウンサーは「少し落ち着くでしょう」と語っていたが、いやいや、スポーツ選手にとっては招からざる熱波。大統領、未来のためになんとかしましょうよ! (専門委員)

 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、佐賀県嬉野町生まれ。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。スーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会に6年連続で出場。

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