断捨離できない

[ 2017年6月7日 08:10 ]

もはや永久保存版?
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 【我満晴朗のこう見えても新人類】なぜか処分できない古新聞がある。09年7月27日付のレキップ紙(フランス)。ツール・ド・フランスを視察した関係者から譲っていただいたものだ。

 22ページ建てのオールカラー。フロント面を占めているのは、当然ながらツール総合優勝のアルベルト・コンタドール(スペイン)だ。マイヨ・ジョーヌを身にまとい、表彰台で右手を掲げている。4面では最終ステージで敢闘賞を獲得した別府史之が簡単に紹介され、5面には総合3位に終わったあのランス・アームストロング(米国)の写真がひときわ目立つ。

 そんなこんなで、全面広告を含め9面までがツール関連。10〜13面がサッカーもの(マルセイユ監督、ディディエ・デシャンの話題など)、14面以降は水泳、陸上、バレーボールなどの記事が連なり、最後の見開きはF1のハンガリーGP決勝だ。優勝はルイス・ハミルトン(英国)。ウイリアムズ・トヨタの中嶋一貴は9位だった。

 なぜこの新聞を廃棄できないのか。主な理由は18面下部に配置された、とある記事の存在だ。優勝トロフィーを抱えて満面の笑みをたたえる女性選手の写真が掲載されている。見出しは「Miyazato soleil levant」、直訳すると「宮里、陽は昇る」かな。そう、ゴルフの米女子ツアーで記念すべき初優勝を飾った宮里藍の記事だ。

 大会名はエビアン・マスターズ。欧州ツアーとの共催で、フランスでの開催だったから、レキップでもそこそこの扱いになったのだろう。日本で数多くの優勝経験を持つ天才少女が米ツアーでは苦戦を強いられながら、挑戦4年目での初戴冠。「この4年間は決して無駄ではなかった」という本人のコメントが引用されている。

 さかのぼること10年、栃木県で行われた全国中学選手権に出場した14歳の宮里を取材したことがある。2日間競技の個人戦では初日に5アンダー67をマークして首位に立った。だが2日目はトリプルボギーを3回も叩くなど大荒れのゴルフで79。初日の貯金でどうにか逃げ切ったものの、インタビューに現れた宮里の目は明らかに腫れ上がっていた。「優勝の喜びより、悔しさのほうが大きいんです」。時に激しくしゃくり泣きながらの受け答え。常に理想を追いかける求道者の雰囲気が当時から漂っていたと思い出す。

 そんな藍ちゃんの記事が、コンタドールやアームストロング、デシャンやハミルトンといったスポーツ界の超セレブ居並ぶ紙面の一部を堂々飾っているわけで…。今季限りでの引退を表明したこともあるし、う〜ん、やっぱり捨てられません。 (専門委員)

 ◆我満 晴朗(がまん・はるお)1962年、東京都生まれ。ジョン・ボンジョビと同い年。64年東京五輪は全く記憶にない。スポニチでは運動部などで夏冬の五輪競技を中心に広く浅く取材し、現在は文化社会部でレジャー面などを担当。たまに将棋の王将戦にも出没し「何の専門ですか?」と尋ねられて答えに窮する。愛車はジオス・コンパクトプロとピナレロ・クアトロ。

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2017年6月7日のニュース