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宮里藍の失われた0・5秒

宮里藍
Photo By スポニチ

 はやくないか?

 そう思ったのは宮里藍引退の知らせを聞く3週間前だった。

 5月上旬、茨城GCで行われたワールド・レディース・サロンパス杯で久しぶりに宮里のプレーを見た時、「世界一遅い」とまで言われたスイングのスピードが速くなっているのを感じた。

 あらためて映像を見ると、米ツアーで勝っていた頃は始動からフィニッシュまで3秒は費やしていた。今は0・5秒ほど短い。

 人間というのは嫌なことはなるべく早く終わらせたい性質(たち)である。

 宮里の練習メニューに1分以上かけて1スイングする「太極拳スイング」というのがあった。嫌なポイントほど無意識のうちに動きが速くなる。それに耐えて、自分を見つめ、問題点を見つけ出すためのメソッドである。

 それでいえば、世界で一番ゆっくりとクラブを振り続けるには莫大な精神力が必要だろう。

 彼女の意志の力そのものだったそのスイングが速くなっていた。

 日本でプロデビューしてから米ツアーに渡るまでを宮里は「自分の殻に閉じこもっていた」と言っていた。07年に記者が取材を始めた頃は、まだその殻のかけらが残っていた時期だった。

 だが、その年から始まったスランプを抜け出すとすっかり殻ははがれ落ち、笑顔は太陽のように明るく、発する言葉には暖かみがこもるようになっていた。

 ゴルフをやめようかと思い悩んだスランプを乗り越えられたのはどうしてだったのか。返ってきたのはこんな答えだった。

「ゴルフをやめても私は私。ゴルフが人生の全てではないと思えたから」

 やがて世界1位に上りつめても、「こんなちっちゃな子でもNo.1になれるんだと身近に感じてくれれば」とまるで尊大になるところはなかった。

 彼女が身近にしたのは、世界1位だけでなく、米ツアーであり、女子ゴルフそのものだった。

 ついにゴルフをやめる時は訪れた。だが、それはまだ少し先の話。新しい門出を祝う前に、残り少ない宮里藍の戦いに精一杯のエールを送りたい。(五輪担当・雨宮 圭吾)

[ 2017年5月31日 10:30 ]

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