ラグビーW杯日本大会の陰で…置き去りにされた7人制へのサポート

[ 2017年5月18日 13:45 ]

2019年W杯日本大会、7人制の20年東京五輪に向けた新たなロゴを発表し、「BIG TRY」を指差す岡村正会長
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 5月10日に京都迎賓館で19年W杯の組分け抽選会が行われた。日本代表はアイルランド、スコットランドなどと同じ1次リーグA組に。19年9月20日の開幕まで、あと2年4カ月あまり。日本で初のラグビーW杯開催にも関わらず、これまではいまいち盛り上がりに欠けていたが、多少は注目度が上がったと感じている。一方で早くも世間から忘れられてしまったのではないかと感じるのが、昨年のリオ五輪で4位に入った男子7人制日本代表の存在だ。

 5月20、21日に聖地・トゥイッケナム競技場(ロンドン郊外)で行われる最終戦を残すばかりとなった、HSBCセブンズシリーズ。昨年12月に始まった今シーズン、2季ぶりに参戦している日本は、先日の第9戦フランス大会(パリ)を終えて自動降格となる総合15位に沈む。自力残留の可能性はなく、14位のロシアを逆転するには最終戦で最低でも8強入りすることが必須。今季11位が最高の日本にとって、このハードルを超えるのは至難の業と言える。

 20年の東京五輪でメダル獲得を狙う日本にとって、チーム強化の柱がシリーズ参戦だったはず。ところがリオ五輪代表の多くが15人制へシフトチェンジし、現代表の五輪組は坂井克行(豊田自動織機)、副島亀里ララボウ・ラティアナラ(コカ・コーラ)の2人のみだ。7人制は五輪競技となったことで、ここ数年で世界的に競技レベルや専門性が高くなった。15人制との二足のわらじを履くのが難しくなっている中、選手個々が自身の競技人生と向き合い、7人制から離れていったのなら、それは仕方ない。

 残念なのは、7人制にコミットしようする選手の後押しをしきれていない、日本協会のサポート体制だ。トップリーグ(TL)はあくまで15人制のリーグ。選手にはチーム活動の対価として給料や年俸が払われるので、特にTLのシーズンが佳境となる12月や1月に選手が7人制代表に招集されるのは死活問題となる。この構造的問題は以前から分かっていたことで、これを解決するために日本協会が代表選手を直接雇用するプランが、いよいよ実施されると期待されていた。昨年8月13日、代表選手がリオから帰国した際、協会幹部も威勢良く実施に踏み切ると叫んだが、結局、何も実現することなくここまで来てしまった。

 単に東京五輪でメダルを獲りたいだけなら、シリーズ参戦に固執する必要はないとも感じる。振り返ればリオ五輪の時は、代表候補19人を発表したのがその年の1月で、そこから休みなく集中的に強化合宿を実施。その結果が初戦でニュージーランドを破り、4位という戦前の予想を上回る結果だった。15人制の15年W杯を振り返っても、その年の4月から集中的に強化合宿をしたことが3勝の躍進につながった。目標の大会へ向けた中期的な集中強化が成果につながることは、これまでの日本ラグビー界が証明しているとも言える。

 しかし、本当にそれでいいのか。ワールドカップや五輪を自国で開催するのは、その競技を根付かせる目的も含まれているはず。限られた選手を一般の目の届かないところで強化しただけでは、国民的なムーブメントにつながるとは思えない。たとえメダルを獲得しても、次の4年も同じことの繰り返し。競技人口が増えることもなく、マイナー競技から脱出することはできないだろう。

 最終戦、日本はリオ五輪金メダルのフィジー、ニュージーランド、今シーズン優勝1回のカナダと1次リーグで同組。「死の組」を脱出し、奇跡の残留を願っていることがとても悲しい。(阿部 令)

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