【上水研一朗の目】王子谷 ウルフの動き完全に止めたことが勝因

[ 2017年4月30日 08:30 ]

柔道全日本選手権 ( 2017年4月29日    日本武道館 )

<全日本柔道選手権大会>判定で優勢勝ちとなり優勝を決めた王子谷
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 右組みの王子谷と左組みのウルフというけんか四つの決勝は、王子谷が右の釣り手(襟などを持つ方)でウルフの左の釣り手を押さえ込んだ。動いて勝機を見いだしたかったウルフの動きを完全に止めたことが、王子谷の勝因だろう。右の大外刈りを得意とする王子谷は、右に距離ができるけんか四つが苦手という印象があった。だが、この一年は苦手なタイプと積極的に稽古を行い、見事に克服した。

 一言で言えば「ナタの切れ味」が王子谷の持ち味。カミソリや日本刀のようなスパッという切れ味ではないが、カミソリや日本刀では切れないものもなぎ倒す迫力がある。以前はそのナタが当たらず、ばたつくような試合もあったが、組み手を研究し、いつでも自分の「まな板」の上に乗せることができるようになったことでムラが消えた。

 日本柔道が目標としてきたリネール(フランス)との対戦でも、胸を合わせる格好になれば勝機が出てくるとみている。あとは、どうやってその形に持っていくか。試合の組み立てを考えるだけでなく、組み手や技の精度と幅を増していくことも必要だろう。(東海大体育学部武道学科准教授、男子柔道部監督)

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2017年4月30日のニュース