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国別対抗・カメラマン村の夜はふけて〜白いリンクの黒い野望編〜

国別対抗のSPでトリプルアクセルから左脚を大きく振り上げる羽生選手。上方からの撮影ですが同じシーンをリンクサイド、右方向から撮影したら…。きっとすごい写真になりそう(撮影・小海途良幹)
Photo By スポニチ

 【長久保豊の撮ってもいい?話】机に両肘をつき、顔の前で指を合わせる。パソコン画面の反射でメガネを白く光らせ、ちょいと上目使いで独りごちてみる(エヴァンゲリオンの人みたいだね)。

 「ヘルシンキ(世界選手権)から、顔を上げてないか?」

 反応なし。

 「トリプルアクセルから顔を客席に向けたまま左脚を上げているよね」

 孤独である。

 フィギュアスケートシーズン終盤、既視感のないシーンを探して直前大会の演技をプレイバックする。秋から春、選手たちの演技はバージョンアップを重ねていくから思わぬ発見もある。国別対抗の前に話題にしたのは羽生結弦選手のSPの演技。トリプルアクセルからの脚上げシーンはプログラムの公開直後からカメラマンとしての狙い目の1つではあった。だが、ジャッジ席から見て斜め右奥、第2コーナーあたりで展開されること(ここでカメラを構えると演技のハイライトである「ズサーッ」が背中になっちゃう)に加え、顔と目線が下を向くことなどで二の足を踏んでいた。

 「それは『撮れ』ってことでしょうか?」

 小海途良幹(こかいと・よしき)は入社11年目。なんでもこなせるカメラマンだ。学生時代から作家・椎名誠さんの雑魚釣り隊で「ドレイ」をやっているというが、今は私のドローン初号機としてフィギュアカメラマン村に潜入させている。

 「まずは『スポルティーバは毎号買ってます』と言ってNさん、『アイスジュエルズで勉強させてもらっています』とか言ってTさんをたらし込め。コアな情報は名古屋のNさん、Mさんから。デビッドやS原さんは、ほっといても時間が解決してくれる。そしてA女史から『うちの娘、どうかしら?』と縁談を切り出されたら一人前だ」。そう言って送り出したが、前任者がアレでアレだから苦労しているらしい。

 「いやだなあ小海途くん、ボクは『撮れ』なんて言ってないよ。独り言だよ」

 手柄は私、責任はアナタ。正しい管理職の姿である。

 「でもね、リンクサイドから真正面で例のシーンが撮れれば、みんな悔しがるだろうな。クックックッ。ましてや今季最後のレッツ・ゴー・クレイジー。悔しくても、もう撮れないからね。クックックッ」。黒い野望を持つ者同士がガッチリ握手。

 エッジの先までピンと伸びた左脚、向けられた鋭い視線。もう出来上がった写真まで想像しちゃったりして…。

 だがSP当日、ドローン初号機、もとい、小海途カメラマンからの1本の電話で事態が一変する。

 「たいへんです。カメラポジションは反対側です」

 そこから意識が飛んでしまっていたので、実際の羽生選手の演技はよく覚えていません。でもトリプルアクセルからの脚上げは間違いなく客席に顔を向けていて、狙いは間違いではなかったと確信しました。白いリンクに黒い野望の花は咲かず…。

 さてフィギュアスケートカメラマン村の夜は更けて。

 選手らと一緒に彼らの回りをうろちょろしていたわれわれも、ちょっとだけ眠りにつきます。真摯に競技や選手に向き合っている方ばかりなので、雑誌や写真集などを手にした際にはカメラマン名などにも注目して下さい。

 目覚めれば平昌五輪シーズン、きっとまた素晴らしいシーンに出合えるでしょう。それまでしばしのお別れでござる。 (写真部総司令)

 ◆長久保 豊(ながくぼ・ゆたか)勝手に役職名を変えたが会社に怒られるまでこのまま行っちゃおうと思っている55歳。ドローン初号機は人間不信のため糸の切れた凧になっちまいました。

[ 2017年4月24日 11:00 ]

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