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[ 2017年3月3日 07:42 ]

2024年夏季五輪招致に向けたイベントでライトアップされたパリのエッフェル塔(AP)
Photo By AP

 【我満晴朗のこう見えても新人類】2024年のオリンピック・パラリンピック夏季大会に立候補していたブダペスト(ハンガリー)が巨額の開催費用を懸念して辞退した。残るはロサンゼルス(米国)とパリ(フランス)だけだが、実はパリも市民からの反対意見がいまだに多い。

 少々気になるニュースもあった。2月3日に招致委員会が発表したスローガン「Made for Sharing」(分かち合おう)について、アカデミー・フランセーズが非難の意を表明したという。それに対し招致委もスローガンの正当性を主張するなど、ちょっとした論争を呼んでいる。

 アカデミー・フランセーズとは1635年創立の団体で、標準フランス語の辞書を編さんするのが主な役目。ざっくり言うと、正しいフランス語を後世に残すための番人的な存在だ。日本なら文部科学省だろうか。いずれにせよ「お上」ではある。

 そんな公的機関が、なぜ招致スローガンに難癖をつけたのか。2月16日に公開された声明書によると、国際オリンピック委員会(IOC)の公式言語は「フランス語と英語」と憲章に明記されており、その順番どおりフランス語を優先すべきというのが主な趣旨だ。

 実は招致委もフランス語でほぼ同じ意味となる「Venez partage」を併記しているのだが、これがアカデミーの機嫌を損ねた。先の声明書は「たとえフランス語バージョンがあるにせよ、英語表記を優先させていることに対し非難の意を表明する」と結んでいる。

 招致委員会の動きは素早かった。翌17日には負けじと反論文を発表。「9月のIOC総会でパリ開催が決まるにはIOCメンバーを説得させなければならない。そのメンバーは67カ国・地域からの出身者で構成されている」「われわれは自国の言語を広めようと願ってはいるが、まずパリそのものを受け入れてもらう必要がある」「われわれの計画をより多くの人々に知ってもらわねばならない」「ゆえに公式言語であるとろのフランス語と英語を併用した」などなど。

 う〜む。双方ともごもっともな意見だ。片や自国の言語を守りたい。片や世界に発信したい。単純化すると「内向き」か「外向き」かの問題となる。当然ながらオリンピック・パラリンピックは国際大会なので、招致委側の主張に分があると思うのだが…。

 ちなみに2020年東京大会の招致委員会のスローガンを調べたら、英語で「Discover Tomorrow(未来をつかもう)」だった。

 これ、みなさん、覚えてますか?

 結局のところ招致スローガンってやつ、あまり人の心に残らないのではないだろうか。彼の地で展開しているのは不毛の論争かもしれない。大事なのは開催決定後。決まったはいいけど、なんだかんだでドタバタしている2020年開催地を他山の石としてほしい。(専門委員)

 ◆我満 晴朗(がまん・はるお)1962年、東京都生まれ。ジョン・ボンジョビと同い年。64年東京五輪は全く記憶にない。スポニチでは運動部などで夏冬の五輪競技を中心に広く浅く取材し、現在は文化社会部でレジャー面などを担当。たまに将棋の王将戦にも出没し「何の専門ですか?」と尋ねられて答えに窮する。愛車はジオス・コンパクトプロとピナレロ・クアトロ。

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2017年3月3日のニュース