【沙羅の兄・寛大さん手記】妥協も甘えもない自慢の妹 私生活も全てジャンプのため

[ 2017年2月17日 10:24 ]

通算53勝目を挙げ日の丸を掲げる高梨沙羅
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 高梨の兄・寛大(かんた)さん(24)が現地で妹の快挙達成を見届けた。父・寛也(ひろなり)さん(49)の指導の下で小さい頃からジャンプに取り組み、12年世界ジュニアでは妹とともに代表入りも果たした。明大を卒業後はTBSに入社。社会人2年目の現在はスポーツ局スポーツニュース部でジャンプ以外にもさまざまな競技を取材している。高梨をよく知る寛大さんが本紙に手記を寄せた。

 W杯では1勝するだけでも大変なことです。男子でも女子でも、それは変わらないと思います。それを積み重ねての53勝は単純に凄い。ジャンプ選手にとってシュリー(レンツァウアー)は神様みたいな存在。その記録に妹が並んだことに凄く興奮しました。でも沙羅はそこまで記録は意識してなくて、総合優勝や、今年なら世界選手権、来年なら五輪のことを真剣に考えているはずです。

 ずっと体幹トレーニングをしてきて、以前よりもジャンプには力強さが加わりました。沙羅は空中で飛型が早く決まるのが特長です。そこに力強さがプラスされた。ジャンプって陸上でのハードルトレーニングで高く跳べるからといって、カンテ(飛び出し口)で力を出せるわけではないんです。体全体、筋肉一つ一つをうまく動かさないと力は伝わらない。そのためには体幹の強さが必要で、今の沙羅は立つ時にしっかりインパクトを伝えて飛べている。そういうふうに見えます。

 シーズン中も月1、2回は一緒にごはんに行きます。仲はいいですね。「仕事どうなの?」とか僕の話を聞いてくれることが多いです。(4位に終わった)ソチ五輪の話もたまにします。「あのとき悔しかったよね」とかそういうフランクな感じで。でも顔には出さないけど今でも結構引きずってるというか、残っているものはあると思います。

 まだ持っていないタイトルが世界選手権の個人と五輪の金メダルだけなので、ぜひ獲ってほしいですね。今年の世界選手権も大きな舞台。ただし、そこで金メダルを獲れたからといって平昌五輪に楽な気持ちで臨めるわけではないと思います。ソチで味わったあの経験というのは、五輪じゃないと消せないと思うんです。

 アスリートとしての姿勢には妹ながらいつも感心します。高校でインターナショナルスクールに行ったのも英語が必要だと思ったから。私生活からジャンプのために何をするべきか考えて行動している。自分もジャンプは好きですけど、そこまではできない。生活の全てをささげるのって口で言うほど簡単じゃない。でも沙羅には妥協や甘えがないんです。

 最近は化粧していることが注目されていますが、自己表現の一つだし、僕はいいことだと思います。20歳ですからね。遅いぐらいですよ。逆に安心しました。あ、女の子だったんだって。ジャンプだけじゃないですからね、人生は。

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2017年2月17日のニュース