プレ五輪で沙羅銀 総合優勝には手応えも「悔しい思いでいっぱい」

[ 2017年2月16日 05:41 ]

ノルディックスキー W杯ジャンプ女子第17戦 ( 2017年2月15日    韓国・平昌=HS109メートル )

表彰台で笑顔を見せる高梨沙羅
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 日の丸女子飛行隊が平昌の舞台でワンツー・フィニッシュだ。平昌冬季五輪のテスト大会を兼ねて行われ、高梨沙羅(20=クラレ)は97・5メートル、94メートルの224・9点で、1回目のトップを守りきれずに2位。ジャンプの男女を通じて歴代最多のW杯通算53勝達成はならなかったが、スキーの日本人最多4度目の総合優勝を決めた。伊藤有希(22=土屋ホーム)が96メートル、101・5メートルの234・4点で逆転優勝。海外での初勝利、通算4勝目を挙げた。16日には個人第18戦が行われる。

 着地地点でしゃがみ込み、小さな背中をさらに小さくしてうなだれた。「落ち込む人」。そんなテーマでロダンが銅像を作ったら、こんなポーズにしたかもしれない。「やってしまったなという…」。高梨の言葉を聞かずとも、その気持ちは痛いほど伝わってきた。

 「平昌に来てアプローチのスピードが出なくなった。スピードに乗れてないからインパクトでも力が伝わってないんだと思う」。1回目はどうにかトップに立ったが逆転を許した。2回目は踏み切りでタイミングが遅れて「ここでそれが出るかという悔しさがある」と歯がゆそうだった。トップ10のうち6人が欠場した平昌五輪のプレ大会。その初戦で勝利を取り逃し、男子のシュリーレンツァウアー(オーストリア)に並ぶW杯最多53勝目もお預けになった。

 体格で勝る海外勢に対し、助走速度で劣ることは珍しくない。それでも飛距離で軽々上回ってしまうのが高梨の凄さでもある。ただし、この日は伊藤と比べても助走速度がはっきり遅かった。1月の日本開催4戦は同じように伊藤をほぼ下回り、成績も後塵(こうじん)を拝した。その後の海外4戦は、助走速度と同様に成績でも上回った。

 浮き沈みの中で、今大会に向けては特徴の似た白馬のジャンプ台で状態を整えてきたはずだった。だが「五輪に向けていい感覚をつかんで帰りたい」という意気込みは実を結ばず、「これでも結果を出せなかったのは準備不足だったということ。今後もっと深く考えていかないといけない」と深刻に受け止めた。

 ただし、その表情は暗く沈んでいたわけではない。慰めとなったのは4度目の総合優勝を決めたことだろう。運不運もあるジャンプ競技。1日の条件だけに左右されない年間タイトルは、ジャンプ選手にとって最高の栄誉でもある。2試合を残してのタイトル確定は、高梨の安定した強さの証でもあった。

 「総合優勝で今シーズンの目標の一つは達成できた。でも今日の試合は自分への悔しい思いでいっぱいです」。その悔しさがあるからこそ、また強くもなれる。4年に1度の舞台はやり直しが利かないが、これはまだプレ大会。反省を糧にして、今日もまたチャンスはある。

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2017年2月16日のニュース