野球、ラグビー、柔道…ルールの過渡期乗り越えてこそ魅力ある競技に

[ 2017年2月15日 15:05 ]

 今月初め、米大リーグで敬遠が申告制になるとのニュースが届き、日本国内でもさまざまな論議を呼んだ。選手会に通告した大リーグ機構(MLB)によれば、試合時間の短縮が主な目的だという。4球投げる時間が省かれれば、約1分の時短につながるとか。それがスピーディーな試合を促し、野球の魅力が増す、というのがMLB側の皮算用だ。

 個人的に賛成も反対もないが、日本の野球ファンの反応は、否定的なものが多い。確かにかつて、プロ野球では巨人のクロマティや阪神の新庄が敬遠球をサヨナラ安打し、21世紀の今も時折テレビでその場面を目にする。機械的に四球にしては、そうしたドラマがなくなる。そういった主張も、分からなくはない。

 実はラグビーの世界でも、今年から時短のために競技規則に変更が加えられる。認定トライ後のコンバージョンキックが廃止され、認定トライによって自動的に7点が与えられる。ラグビー担当になって3年以上経つが、実際に認定トライ後のコンバージョンキックが外れるシーンを見たことがない。だからなのか、こちらは敬遠廃止案と違って特に論議を呼んでいない。1試合で一度あるかないかの認定トライだけに、効果のほどはさておき、競技をより良い方向へと進める気概は歓迎できることだ。

 現代においては例えアマチュアであっても、見る者あってのスポーツ。競技の魅力を高めることは、ファンの獲得や集客につながり、競技の発展やレベル向上へとつながっていく。発祥国の日本はともかく、五輪競技の中では世界での人気が中位以下と言える柔道は、男子の試合時間を5分から4分とする新ルールを今年になって試験運用している。技あり2本による合わせ技一本や、制限時間内での指導差による勝敗決定も廃止された。選手はより攻撃的にならざるを得ず、先日開催されたグランドスラム・パリを視察した全柔連の山下泰裕副会長は「試合がダイナミックになった」と一定の評価を下した。

 次の夏季五輪、つまりは20年の東京五輪まではあと3年。どの競技においても選手の勢力図、ルールのおいて過渡期となるのは間違いない。そしてそこをうまく乗り越えた競技は、3年後により多くの観衆を魅了することになる。野球・ソフトボールもまた、東京五輪で採用される競技。新しいルールをはなから否定せず、メリットがあることも世論が受け入れてくれればいいと思うのだが…。(記者コラム・阿部 令)

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2017年2月15日のニュース