「関心ない」が際立つ平昌五輪 東京五輪は大丈夫か

[ 2017年2月14日 10:30 ]

平昌五輪の大会マスコットのスホラン(左)、バンダビ
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 【藤山健二の独立独歩】来年2月9日に開幕する平昌五輪まであと1年となった。現地では各競技のプレ大会が盛大に行われているが、韓国国内の世論調査を見る限り、盛り上がりはもう一つらしい。五輪に「関心がない」と答えた人は49%にも上り、「関心がある」の48%を上回った。さらに大会が「成功しない」と考えている人も38%に達するなど、悲観的な見方をする人も多いようだ。

 大会を取り巻く環境は確かに厳しい。昨年から続く政治的混乱の中で五輪を担当する現職の文化体育観光相が逮捕され、財閥への批判が高まった影響でスポンサー企業による協賛金もいまだに目標の9400億ウォン(約940億円)に届いていない。政治的混乱がさらに長引けば国際的なイメージ低下も懸念される。

 もともと韓国では冬季競技への関心が薄く、人気があるのは金妍児(キム・ヨナ)が活躍したフィギュアスケートや伝統的に韓国が強いショートトラックぐらいで、特にスキー競技への関心はきわめて薄い。しかも平昌はソウルからの距離も遠く、開催地に決まった時から観客動員の苦戦が予想されていた。組織委員会や政府はあの手この手で必死にPRを続けてきたが、結局、大会を誘致した政府・自治体と国民との意識の差はほとんど埋まらなかった。

 翻って日本はどうか。東京が20年五輪招致に立候補した際、国際オリンピック委員会(IOC)が一番懸念していたのは都民、国民の支持だった。他の都市と争っていた12年の1次選考当時、IOCが独自で行った日本国内の世論調査では「招致に賛成」がわずか47%しかなく、他の都市より圧倒的に低かった。当時の招致本部や各国内メディアが実施した調査では賛成が過半数を占めていたため、IOCの調査自体に疑問を投げかける声もあったが、IOCが最後までいわゆる「支持率」にこだわっていたのは事実だ。それから5年たち、昨年内閣府が実施した最新の世論調査では「関心がある」が8割を超えている。平昌で日本選手が活躍すればこの数字はさらに跳ね上がるだろうし、少なくとも現時点では東京の方が平昌よりも「成功」に近い位置にあるのは間違いない。

 ただし、これはあくまでも現時点での話だ。新国立競技場やエンブレムの盗作疑惑、競技会場の再考など懸案事項はほぼ解消したが、大会経費の分担など新たな火種になりそうな問題はまだ残っている。処理を誤れば五輪の「支持率」がいつまた急降下するかわからない。選手の活躍やドーピング、テロ対策、レガシーなど大会「成功」の要素はたくさんあるが、一番大切なのは都民、国民の「熱意」だということを都庁、組織委員会の皆さん、ぜひお忘れなく。(編集委員)

 ◆藤山 健二(ふじやま・けんじ)1960年、埼玉県生まれ。早大卒。スポーツ記者歴34年。五輪取材は夏冬合わせて7度、世界陸上やゴルフのマスターズ、全英オープンなど、ほとんどの競技を網羅。ミステリー大好きで、趣味が高じて「富士山の身代金」(95年刊)など自分で執筆も。

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