体を鍛えていますか?まだまだ格差がある日米スポーツ選手の肉体

[ 2017年2月9日 08:30 ]

キャバリアーズのレブロン・ジェームズ(AP)
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 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】かつてテネシー州ノックスビルにあるテネシー大の施設を見学したことがある。当時のフットボール・チームのヘッドコーチと選手用の“学食”でランチを共にしたが、デザートのメニューまで豊富にあって驚いた。9万人収容のスタジアムを見学したあとにスタッフに連れていかれたのがウエート・トレーニング・ルーム。まずその広さと器具の多さに目が点になった記憶がある。

 そして壁に掲げられた2つの「クラブ名」が気になった。タイトルの下には選手の名前が記されている。1つは「400ポンド・クラブ」で日本的に換算すると181キロ。なんの重さなのかと尋ねたら、ベンチプレスでのバーベルの重量なのだという。アメリカン・フットボールのラインマンにとって、この400ポンドが「非凡」と「平凡」を分けるラインなのだそうだ。

 もうひとつは「40インチ・クラブ」でこちらは102センチ。このクラブにはフットボール選手以外に陸上とバスケットボールの選手が名を連ねていて、垂直跳びでこの高さをクリアすると“入会”が認められる。最長身は2メートル1で最低身は私より6センチも低い1メートル65。高校時代、私は70センチで日本人的には跳躍力がある方だと思っていたが、テネシー大では「クラブ入会資格」にはほど遠い最後尾の?人間だったことを思い知らされた。

 いつも思うのだ。米国のスポーツ選手の肉体へのこだわりは日本人よりも明らかに強い。それをことのほか称賛するつもりはないが、学生時代からプロ意識に近いものを持ち合わせているから、彼らはいつも必死になって汗を流す。あるラインマンは授業と練習がない時にはいつもここに来て黙々とバーベルを挙げ、あるワイドレシーバーはジャンプ力とスプリント力をアップさせるために、ふくらはぎと臀部(でんぶ)だけの強化メニューをオフの間、毎日続けているという話も聞いた。

 「努力」ではなく「日常」なのだ。競争相手が多いから、その程度のトレーニングを努力と感じている選手はまず最初に脱落していく。そこはまだカレッジという名のアマチュアの世界だったが、2つのクラブが日本との違いを物語っていたような気がする。

 NBAキャバリアーズの大黒柱、レブロン・ジェームズ(32)がコート上でどれくらいのスピードで走っているのかを米スポーツ専門局のESPNが測定したことがある。瞬間最高ではあるが、ジェームズは相手の速攻を追いかける際、100メートルを10秒9相当でクリアする速度を出していた。2メートル3、113キロの人間がこのスピードを出すのだ。だから彼に勝とうとするなら、バスケをする前にまず速く走れるようになること、そして速く走るにはそれに必要な筋肉を鍛えること、そしてそれを平然と日常生活の一コマとしてやれること…。フットボールやバスケットボールに限らず、日本が米国に追いつくにはまだやることが山積みになっていると思う。(専門委員)

 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、佐賀県嬉野町生まれ。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。スーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会に6年連続で出場。

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