ラグビー日本選手権 大学出場枠撤廃 懐古主義ではなく未来見据えた強化策を

[ 2017年1月23日 11:30 ]

サントリーに敗れ、スタンドに頭を下げる帝京大フィフティーン
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 来季のラグビー日本選手権から、大学出場枠が撤廃される。半世紀続いた「社会人対学生」の対決がなくなる。百家争鳴となるのは当たり前だ。1月21日、現時点では歴史上最後の「社会人対学生」となるかも知れないサントリー対帝京大の熱戦を取材したばかりだが、私は撤廃を好意的に捉えている。

 第一の理由に、日本ラグビー全体が代表強化にプライオリティーを置かなければならない事情がある。スーパーラグビーへの参戦で、トップ選手の負担は限界値を超えている。国内シーズンを効率化し、日本代表やスーパーラグビーでの活動にもっと注力させる。これは日本協会が今回の変更を決めた最大の理由でもある。まずは19年のW杯日本大会までと言うが、W杯は4年に1回開催される。19年以後も継続されるべきだと考える。

 大学世代の強化の場が失われるとの声も聞かれるが、他に手を尽くせることはたくさんある。まず関東なら、半世紀分裂したままの関東大学対抗戦とリーグ戦を再統合することが先決。帝京大対東海大など、今年度の全国大学選手権の決勝カードが秋のシーズン中に実現すれば、それだけで学生の普段の取り組みは変わるはずだ。

 日本協会も今後は大学とトップリーグの二重登録について検討を始めると明言しているが、今季も筑波大4年のSO山沢拓也がパナソニックで選手登録してプレーしている。山沢の場合は筑波大での公式戦出場ができず、大学側にとっては大きな戦力ダウンになったことは否めないが、その犠牲を払ってまで将来性ある選手を送り出した筑波大の英断には敬意を表したい。今後も山沢に続く選手が出てきてほしいと思うし、二重登録が認められれば一気に増える可能性がある。日本選手権に大学枠を残すよりも、はるかに大きな強化の成果を残すことは間違いない。

 また、サントリーのSO小野晃征やFB松島幸太朗のように、大学を経由せずにトップリーグでプレーする選手を増やす環境整備も欠かせないだろう。プロ野球やJリーグでは高卒新人が活躍できるのに、ラグビーでは未だにほとんどの日本人選手が大学経由でトップリーグを目指す。体作りには時間を要するかも知れないが、チームがしっかりとした育成システムを構築すれば、高卒2、3年後には活躍できる選手が出てくるはずだ。

 何よりもまず、日本最高峰を謳うリーグのチームが、たとえ大学最強のチームであれ負かされるのであれば、その国全体の競技力が低いと考えるべきだと思う。社会人対学生の一発勝負の日本選手権で盛り上がったのは過去のこと。懐古主義ではこの国のラグビーに未来はない。(記者コラム・阿部 令)

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2017年1月23日のニュース