どうするNHL?平昌五輪に参加するのか、しないのか…

[ 2016年10月31日 09:45 ]

 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】全30チームで構成される北米アイスホッケーリーグ(NHL)は開幕して2週間ほどが経過している。そのNHLから国際戦略部のリン・ホワイト副部長とダン・クレイグ施設担当が韓国入り。10月27日に平昌(ピョンチャン)五輪のアイスホッケー競技場がある江陵(カンヌン)に足を運んだ。現地にはNHL選手組合の役員もいて入念に施設をチェック。ただそこから先の動きはまだ報じられていない。

 平昌五輪のアイスホッケー競技場はいろいろな問題を抱えている。すでに9割以上ができあがっているものの、ここにいたるまでに積雪に対する構造上の強度不足、耐火塗料が十分ではないといった“弱点”が指摘されていた。これを受けて冬季五輪に過去5大会連続でトップ選手を派遣しているNHLは、平昌五輪への選手派遣の結論を保留。施設の状態を十分見極めて最終判断をすることになった。

 韓国ではアイスホッケー場はおそらく「レガシー」にはならない。だからゴージャスな施設は造れない。一方、高額所得者がそろう選手派遣に対し、NHL側は安全面を含めて慎重にならざるをえない。だからスタッフが現地で現状を確かめようとしたようだ。

 五輪で使用されるアリーナをニュースで見たのだが、屋根は決して高いとは言えず、建物自体も大きくはない。ところがNHLがシーズンで使用するアリーナは完成度が非常に高いのだ。

 ロサンゼルスを本拠にしているキングスのホームアリーナは、NBAのレイカーズとクリッパーズも使っているステイプルズセンター。NHLの試合時の収容人員は1万8000人で、レイカーズ、クリッパーズを含めた3チーム分のロッカールームと更衣室、さらに専用の会議室が完備されている。

 昨季のスタンレー杯決勝を制してNHLの王者となったのはピッツバーグを本拠にしているペンギンズだが、ホームのコンソル・エナジー・センターは総工費3億2100万ドル(約334億円)を投じて2010年に完成したアリーナだ。ここには巨大な大型スクリーンがあり、こけら落としはポール・マッカートーニーのコンサートだった。

 NHLのアリーナに対する思い入れとプライドはNBAを上回っているかもしれない。そもそも1946年にNBAがBAAとして誕生できたのは、NHLが試合のないときのアリーナの活用法を思いついたから。NHLがなかったらNBAはこの世に存在していなかった可能性もある。

 現在でも多くのアリーナが基本的にはアイスホッケー用のリンクで、バスケットボールのコートはリンクの上に断熱材を敷いて作っているいわば「臨時競技場」だ。だからNHL側にしてみれば安全性の問題と同様に、中途半端なアリーナで選手をプレーさせることに対しては強い拒否感があるのかもしれない。

 AP通信によれば、NHLのビル・デイリー副コミッショナーはNHLの選手が平昌五輪に参加することについて「ネガティブ」なのだそうだ。国際オリンピック委員会(IOC)の担当者は「施設のチェックはポジティブなステップだ」と語ったが、さてNHL側はどのような答えを出してくるのだろう。

 アイスホッケーは冬季五輪の人気競技のひとつ。ただそこに世界のトップ選手が本当に集まるのかは微妙だ。本番まであと1年4カ月。はたして氷の上は“ホット”になるだろうか?(専門委員)

 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、佐賀県嬉野町生まれ。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。スーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会に6年連続で出場。

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2016年10月31日のニュース