１７歳“ＮＡＳＡ”メジャーで前人未到！最年少＆アマ初Ｖ！！

[ 2016年10月3日 05:30 ]

女子ゴルフツアー日本女子オープン最終日（ 2016年10月2日栃木県那須烏山市　烏山城カントリークラブ二の丸・三の丸コース＝６５０６ヤード、パー７１）

　１７歳の高校生が日本女子ゴルフ界の歴史を変えた。首位と４打差の５位から出た畑岡奈紗（１７＝茨城・ルネサンス高３年）が５バーディー、２ボギーの６８で回り、通算４アンダー、２８０で史上初のアマチュアによるメジャー優勝を達成した。２０歳の堀琴音（東芝）を１打差で振り切った。畑岡はツアー史上最年少優勝記録を持つ勝みなみと同学年。黄金世代にニューヒロインが誕生した。

　名前は奈紗。「ＮＡＳＡ（米航空宇宙局）」が由来だ。両親が込めた「アポロ計画のように前人未到のことをやってほしい」という願いの通り、１７歳の畑岡が快挙をやってのけた。史上初のアマチュアによるメジャー優勝。「とてもうれしい。毎回悔いがないショットをすれば、優勝のチャンスがあるかもと思っていた」と歓喜に浸った。

　武器は再現性の高いスイングと飛距離の出るショット。第３ラウンド後には指導を受ける中嶋常幸から「ショットのインパクトで頭が動く」と指摘され、頭を動かさないように直々に額に棒を当ててもらいながら修正した。この日はその武器がさえた。１打差で迎えた最終１８番はピンまで残り１４５ヤードの第２打を７Ｉで奥４メートルにつけ、軽いフックラインを沈めトップに並んだ。堀琴が１８番でバーディーを逃して勝利が決まると、中嶋と抱き合い涙。日本女子プロゴルフ協会の小林浩美会長は「３０年に一人の逸材」と舌を巻いた。

　涙の数だけ強くなった。母・博美さん（４６）が茨城の宍戸ヒルズＣＣの職員で小さい頃からゴルフ場が遊び場。１１歳から本格的に競技を始めた。小学５年で初めて出場した大会は敗れて号泣。父・仁一さん（５１）が「スポーツで泣くのは初めて」と目を丸くしたほどだ。２年前の日本ジュニア選手権で逆転負けした時も泣いた。会場で泣き、茨城県の自宅へ帰る道中で泣き、自宅へ帰ってからも風呂の中で泣き、夏の甲子園で地元・藤代高の逆転負けを報じるニュース番組を見ると、自分を重ね合わせてまた泣いた。仁一さんは「あんなに泣いたことはない。ただ、あれから目の色を変えて練習するようになった」という。

　昨年１１月の樋口久子Ｐｏｎｔａレディースでは最終日に首位から出たが、崩れて７位に終わった。悔しさからナショナルチームの合宿で教わった体幹トレーニングなどを毎日欠かさず行った。体が１年で一回り大きくなり、ナショナルチームのユニホームはサイズが合わなくなった。よりゴルフに集中するため今年４月から通信制のルネサンス高に編入もした。

　茨城県内の会社で家具の輸入担当を務める仁一さんは「日本だけだと視野が狭くなる」と娘を積極的に海外の試合にも送り出した。今年は米ツアー、スウィンギングスカート・クラシックや全米女子アマに出場。「将来はこの舞台でやりたい」と米ツアーの来季出場権をかけた予選会も戦っている。将来の夢は「全米女子オープン優勝と東京五輪で金メダル」。壮大な夢を追ってロケットが大きく飛び出した。

　◆畑岡　奈紗（はたおか・なさ）

　☆生まれ　１９９９年（平１１）１月１３日、茨城県出身の１７歳。１メートル５８、６２キロ。血液型Ａ。ルネサンス高（通信制）３年生。家族は父・仁一さん（５１）、母・博美さん（４６）、妹・利安（りあん）さん（１４）。

　☆ゴルフ歴　小学校時代は少年野球チームでレギュラー。ゴーカートに熱中したことも。ゴルフ場勤務の博美さんの影響で１１歳でゴルフを始める。中学時代は陸上部で２年時の県大会で２００メートル７位入賞。中学２年で中嶋常幸が主宰する「ヒルズゴルフトミーアカデミー」に入門。高校進学と同時にゴルフに専念した。得意クラブは１Ｗ。ヘッドスピードは秒速４７メートル。平均飛距離は２５０ヤード。

　☆主な戦績　１５、１６年世界ジュニア選手権連覇。１５年国内ツアー樋口久子Ｐｏｎｔａレディース７位、日本女子アマ選手権ベスト１６。１６年米ツアー・スウィンギングスカート・クラシック５０位、全米女子アマチュア選手権ベスト８、日本女子アマチュア選手権２位。

　▼アマチュア初のメジャー制覇　アマチュアによるツアー優勝は１４年ＫＫＴ杯バンテリン・レディースの勝みなみ以来で史上５人目。また１７歳２６３日でのツアー初優勝は歴代３位の年少記録。０５年に宮里藍が作った日本女子オープンの最年少優勝記録（２０歳１０５日）、８９年ＪＬＰＧＡレディーボーデン・カップで平瀬真由美が樹立したメジャー最年少優勝記録（２０歳２７日）を更新した。

　