国内主要マラソンを冬から夏に移行すべきではないか

[ 2016年10月1日 09:00 ]

リオ五輪女子マラソン、14位でゴールした福士(AP)

 【藤山健二の独立独歩】9月25日に行われたベルリンマラソンで、エチオピアのケネニサ・ベケレが2時間3分3秒の世界歴代2位のタイムで優勝した。日本の川内優輝(埼玉県庁)は2時間11分3秒の13位。その差は実に8分もあり、あらためて世界との差を見せつけられる結果となった。

 もはや高速コースで日本の選手が勝つことは100%ありえない。だが、4年に一度の五輪ならまだチャンスがあるかもしれない。ペースメーカーがいない五輪では今回のベルリンのような高速レースになることはない。現に8月のリオデジャネイロ五輪でも優勝したキプチョゲ(ケニア)のタイムは2時間8分44秒だった。本来このタイムなら日本勢でも勝負できたはずだが、集団内でのペースの上げ下げについて行けず、あっさりと脱落したのはご存じの通り。もはや尋常な手段では再起は不可能だ。そこで一つ提案がある。冬場に行われている今の国内マラソンをすべて夏場、もしくは春秋に移してみたらどうだろうか。

 五輪や世界選手権は必ず7~8月の真夏に行われる。海外の主要マラソンは5月から8月のトラックシーズンの前後、つまり4月と9~10月に行われている。ボストン、ロンドンは4月、ベルリンは9月、シカゴは10月だ。真夏ではないが、それでも真冬に行われている日本のマラソンよりはまだ五輪の気象条件に近い。日本の選手が暑さに強いというのは昔の話で、すっかり真冬のマラソンに慣れてしまった今の選手は外国勢よりも暑さに弱い。外国勢は春から夏のトラックでスピードを磨き、秋のマラソンでそのスピードを生かして記録を更新している。対する日本勢はトラックシーズンが終わると駅伝シーズンが始まり、その後に真冬のマラソンへと移る。もし国内の主要マラソンを9~10月に移せば外国勢と同様にトラックでのスピードをマラソンに生かしやすくなるし、とかくマラソンとの両立で問題となる駅伝も、マラソン後の1~2月に行えば支障はなくなる。

 その上で、トラックでスピードを磨くことも重要だ。今や夏のマラソンでもスピードは欠かせない。5000メートルや1万メートルはもちろん、800メートルや1500メートルでスピードを磨く必要がある。短距離や長距離に比べ、日本はこの中距離の強化が著しく遅れている。中長距離でしっかりとスピードを身につけ、夏に近い条件の春秋マラソンで経験を積めば、少なくとも今よりは世界との差が縮まると思うのだが…。

 五輪を第一に考えるなら冬にマラソンを走るメリットは何もない。春秋への移行は障害も多いだろうが、過去の常識にとらわれず、思い切った手を打たない限り、マラソン日本の未来はない。(編集委員)

 ◆藤山 健二(ふじやま・けんじ)1960年、埼玉県生まれ。早大卒。スポーツ記者歴34年。五輪取材は夏冬合わせて7度、世界陸上やゴルフのマスターズ、全英オープンなど、ほとんどの競技を網羅。ミステリー大好きで、趣味が高じて「富士山の身代金」(95年刊)など自分で執筆も。

続きを表示

2016年10月1日のニュース