石川遼、熊本訪問の意味…被災地の子どもたちに必要なものとは

[ 2016年9月30日 11:00 ]

小学校を訪問、子供たちにクラブの握りを教える石川

 男子ゴルフの石川遼(24=CASIO)が26日、熊本地震で被災した熊本県菊陽町の菊陽南小を訪れた。日本ゴルフツアー機構(JGTO)の社会貢献活動の一環で、同町在住の重永亜斗夢(28=ホームテック)の誘いに応じたものだ。

 快晴、気温30度を超える酷暑の中、午前中はグラウンドで子どもたちと一緒にスナッグゴルフを楽しんだ。石川はグリップの握り方やスイングの仕方を指導。模範演技として豪快なショットを披露してみせた。

 その後、教室に移動して子どもたちと一緒に給食を食べて、午後は体育館で「夢を持とう」と題して講演を行った。講演といっても堅苦しいものではない。重永と並んで着席。プロゴルファーになるまでの自らの人生について語る。即席のトークショーだった。

 石川が伝えたかったのは様々なことに挑戦し、夢を見つけることの大切さだった。石川自身、水泳、サッカー、陸上、バスケットボールなどゴルフ以外の様々なスポーツを経験してきた。その中からプロゴルファーになるという夢を見つけた。

 「それぞれ長く続けることができるものがある。スポーツや勉強でなくてもいいから、みんなにも何かをやってほしい」と訴えた。子どもたちの心にどう響き、後の人生にどんな影響を与えるのか。それは分からない。しかし石川が熊本まで足を運んだ意味は確実にあった。

 石川が学校を後にしようとした時、10人ほどの子どもたちが駆け寄ってきた。「帰るの」「また来て」。名残惜しそうな声が聞こえた。手をつかんで離さない。そんな感じだった。みんな弾けるような笑顔だった。

 「みんな楽しくやってくれて、来て良かったなと思った。それ以上にパワーをもらった」。石川はそう言ったが、そのパワーを与えたのは石川自身だったのだと思う。

 災害や病気によって困難な状況にある時、気に掛けてくれる人の存在がどれほどありがたいか。会いに来てくれる人の存在がどれほど大きな力になるか。そういう立場になるとよく分かる。

 石川は被災地訪問を躊躇していた。「どのタイミングで行けばいいのか。何をすればいいのか。考えていた」。自分が行くことで迷惑がかかるのではないのか。そうした危惧も持っていた。しかし、動けばそこに必ずエネルギー、パワーが生まれるものなのだ。子どもたちの笑顔はその証だ。

 石川に声を掛けた重永は自身も被災者である。家族が1週間ほど車中泊を余儀なくされた。だからこそ被災した子どもたちに何が必要なのかをよく分かっている。

 「(石川)遼や松山のように有名なプロが来てくれると大きい。これからも2回、3回と続けていきたい」。重永はそう言った。ゴルフ界全体が継続的に被災地支援を行っていくことを期待している。

 かしこまる必要はない。お土産もいらない。足を運ぶだけでいい。笑顔が増えればそれが支援になる。 (福永 稔彦)

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