リオ五輪 7人制で大金星の瀬川HC 4つの勝因を後輩に語る

[ 2016年9月26日 21:52 ]

リオデジャネイロ五輪男子7人制ラグビーの瀬川ヘッドコーチは母校の大体大で講演した(前列左から4人目)

 オールブラックス撃破は学者も真っ青になる緻密な研究の成果だった。リオデジャネイロ五輪男子7人制ラグビーの瀬川智広ヘッドコーチが26日、母校の大体大(大阪府熊取町)で講演。五輪1次予選初戦でニュージーランドから14―12で大金星を上げ、世界に衝撃を与えた背景を約200人の学生に語った。

 【勝因(1)入念な予行演習】

 「7月にオーストラリアで強化合宿をし、その時からニュージーランド戦を想定した過ごし方をしていた。宿舎からバスでグラウンドに移動し、テーピングをどのタイミングで巻くかも試合と同じ。事前に五輪のウオーミングアップ会場の広さも把握していたので、それと同じような狭い場所でアップをした。使うサインプレーの順番も練習から実行していた。これを1週間に1回。普段の練習でも“今日はニュージーランド戦で”といった感じで初戦にターゲットを絞っていた」

 【勝因(2)牛歩戦術】

 「実際にボールが動いている時間を短くする作戦だった。インプレーの時間が長くなるほど、実力があるニュージーランドが優位になる。試合は前後半合わせて14分あるが、実際のプレー時間は6分以下にしたかった。そのために、反則の後にタッチに蹴り出す時でも、審判に注意されない程度に時間をかけた。反則の後に攻撃をしかけようとして選手が一度(陣形をつくって)並んだ後に、“やっぱりタッチにします”とか。これがいけないプレーかどうか、日本にいる時に審判に確認していた。2回目からはダメでは、という回答だった」

 【勝因(3)気象条件まで下調べ】

 「ウェザーニューズ社と契約し、1カ月前から同社がリオの気象条件のデータを取っていた。天気予報はほぼ完璧でいつ雨が降るのか、風がどれぐらい吹くのかは分かっていた。雨や風が強くなるようなら、ラインアウトのサインを変えようなどと考えていた」

 【勝因(4)控えの奮闘】

 「メンバーを12人に絞った後、チームの雰囲気が変わった。発表したことで“落ちた選手のために”という気持ちになることを期待したが、選手は“またメンバー変更があるのでは”と疑心暗鬼になってハードな練習をためらう雰囲気ができてしまった。そんな時に(バックアップメンバーで帯同していた)藤田(パナソニック)と松井(同大)が激しく体をぶつける1番いい練習をしてくれた。それを見た主将の桑水流(コカ・コーラ)が“残ったメンバーがこれでどうする”とチームに訴えた。変わったのはそこから。これがリオに入る直前、サンパウロ合宿の最後の方の出来事。ギリギリのタイミングだった。1日で人の気持ちは変わるものだと思った」

 これら4項目だけでなく、瀬川ヘッドはニュージーランドのメンバー1人1人のプレーの癖を全て丸裸にしていた。「ホテルの壁に相手の写真を貼って」というほどの徹底ぶりだった。それをチームに落とし込んだ。「普通にやれば10回に1回かてるかどうか」のラグビー大国を打ち負かしたのは、気象までも把握しようとする「知」の勝利でもあった。

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2016年9月26日のニュース