豪栄道 境川親方に贈る賜杯…「決めてこい」心にしみた前夜の連絡

[ 2016年9月25日 07:40 ]

タイを両手に笑顔の豪栄道(左は妙義龍、右は豊響)

大相撲秋場所14日目

(9月24日 両国国技館)
 館内の豪栄道コールに胸がいっぱいになった。豪栄道の母・沢井真弓さん(60)は両国国技館で息子の優勝を見届けた。「凄くうれしい。信じていました。豪太郎に対する“おめでとう”の声が聞こえ、私もうれしかった」と涙を見せることなく喜んだ。

 14年の大関昇進後はケガで低迷し、そのたびに電話をかけたが「いつも大丈夫と言っていた」という。家族に対しても弱音は吐かない。思うような成績を出せないのも、ケガをするのも自分の責任。そんな息子の晴れ姿に「生まれた時は4300グラムあった。苦しんで産んだかいがありました」と笑い、豪栄道の姉の笠原優雅(ゆうか)さん(36)らとともに支度部屋から出てきた大関を祝福した。

 幼い頃からわんぱく相撲などで活躍、埼玉栄高では総体など11冠を獲得し、05年初場所でデビューした豪栄道の順風満帆な相撲人生が暗転したのは10年春だった。自身の野球賭博関与が発覚し、監督責任を問われた師匠の境川親方(元小結・両国)とともに同年名古屋場所の謹慎処分を受けた。外出禁止の親方は趣味の散歩ができず、稽古場の土俵を毎日何周も歩いた。汗だくの姿を見て「つらいのと申し訳ないのと…」と居たたまれない思いにさいなまれ「いつか、おやじ(師匠)を心底喜ばせたい」と心に誓った。

 それから6年あまり、ついに迎えた晴れの舞台。九州場所担当部長のため、福岡市内の宿舎でテレビ観戦していた師匠は、前日13日目の夜、初めて弟子に連絡を取った。「あした(14日目)決めてこい」。その言葉は、優勝の重圧に苦しみ抜いていた愛弟子の何よりの励みになった。

 取組後、師匠は「(本人は今場所で)一番緊張した表情をしていた。それでも自分の相撲を思い切り取った」と評価し「つらい思いをしてきたのを間近で見てきたので良かった。どんな大ケガでも言い訳一つしなかった」とどん底からはい上がった精神力を称えた。自らを信じ続けてくれた師匠の思いに応えた豪栄道は「自分はいいかげんな人間だけど、親方は愛情を持って接してくれた」と感謝した。師匠は25日に帰京し、弟子と対面する。98年の境川部屋創設から初めての幕内優勝。「顔を見たら言葉が出ないかもしれない。(お互いの思いは)目を見たら分かるでしょう」と感無量の様子で話した。

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2016年9月25日のニュース