競泳タッパー 正確な技術で距離感伝える「選手の目」

[ 2016年9月15日 08:45 ]

決勝、ゴールを木村に知らせる寺西コーチ(右上)

 視覚障がい者の水泳ではスタート台の横でターンやゴールのタイミングを伝えるタッパーの存在が欠かせない。木村敬一のタッパーを務めるのは筑波大付属視覚特別支援学校教員の寺西真人さん(57)。木村は同校在籍時に寺西さんの指導を受けて成長し、現在もタッパーを依頼している。

 タッパーは「タッピング棒」と呼ばれる棒で、選手の頭や背中を叩く。タッピング棒にはルールはなく、各国全てオリジナル。海外には3メートルを超える長いものを使用するタッパーもいる。寺西さんはカーボン製の釣り竿を約2メートルに切り、先端部には丸く削ったウレタン素材を差している。

 寺西さんが叩くタイミングは木村がプールの壁面に到達する1ストローク手前。近い時は強く、遠い時は軽めに叩いて、木村に距離感を伝える。

 視覚障がい選手にとって特に自由形のクイックターンは難しい。「近すぎれば膝が詰まるし、遠ければ足先でチョンと蹴るだけになる」。ちょっとしたズレがタイムロスにつながる。近年パラ競泳はレベルは上がってタッチ差の勝負が増えており、より正確なタッピングが求められている。「タッピングで速くなることはないけれど、タイムをロスすることはある。私のせいで木村の努力を台無しにしたくはない」。寺西さんはレース前、宿舎やサブプールで棒を振ってイメージトレーニングをして備えるという。

 心掛けているのは「木村の目になること」。木村の気持ちになって、叩くタイミングを合わせている。木村はそんな寺西さんのタッピングを「安心して壁に突っ込んでいける」と信頼している。

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2016年9月15日のニュース