錦織4強 マリーに雪辱 雨、爆音、チョウにも集中乱れず

[ 2016年9月9日 05:30 ]

<全米オープンテニス>ファイナルセット、第5ゲームを奪い雄叫びを上げる錦織圭

全米オープン第10日男子シングルス準々決勝 錦織 1―6、6―4、4―6、6―1、7―5 A・マリー

(9月7日 ニューヨーク ビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンター)
 4大大会初優勝に向けて大きな壁を乗り越えた。男子シングルス準々決勝で、世界ランキング7位で第6シードの錦織圭(26=日清食品)は、世界2位で第2シードのリオデジャネイロ五輪金メダリスト、アンディ・マリー(29=英国)を1―6、6―4、4―6、6―1、7―5で撃破。3時間58分に及ぶ熱戦の末に、2年前の今大会以来2度目となる4大大会4強入りを決めた。9日(日本時間10日)に予定されている準決勝では、世界3位のスタン・バブリンカ(31=スイス)と対戦する。

 蝶か、蛾(が)か。第4セットの終盤、黄色い羽をひらつかせた珍客がコートに現れた。勝者たる資格を持つのはどちらの選手か。それを試そうとする神様のいたずらだったのかもしれない。「奇麗な蝶々だなと思っていた。それにイラつく元気もなかったので落ち着いてプレーできた」。プレー以外に気を向ける余裕はなかった。おかげで錦織の集中は乱れなかった。

 A・マリーの心は千々に乱れた。このセットの第3ゲームでは別のハプニングにも見舞われていた。ラリー中に場内のスピーカーから「ゴオ~ン」と謎の雑音が響き、主審がプレーやり直しを宣告。ブレークのチャンスを逃したA・マリーは主審に食ってかかるほどイライラを募らせた。加えてコート上を気ままに飛び回る邪魔者の登場。あからさまに気を取られ、ショットをネットにかける場面もあった。

 限界ギリギリだった錦織は「疲れてきた時になぜかより集中できたりする。あまり気にならなかった」と雑音も全て受け流した。ベンチに戻ってまで主審に抗議を続けたA・マリーとはあまりに対照的だった。

 それでも序盤は焦りがあった。攻め急いでミスが続出。第1セットをあっさり落とした。第2セットの降雨中断中にコーチと話し合い、焦らずにラリーを続けるプレーに転換。「しっかり落ち着きを取り戻して最後までプレーできた」と真綿で絞め上げるような攻めで相手のミスを引き出した。

 ドロップショットやネットプレーも自在に交え、強固な守備をこじ開けた。第2セット以降は10本のブレークポイントのうち9本をものにする勝負強さを発揮。第1サーブが55%にとどまったA・マリーをリターンから崩した。

 世界1位のジョコビッチ(セルビア)をしのぐと目されていた今大会のA・マリーに、準決勝で敗れたリオ五輪の雪辱を果たしての準決勝進出。まだベスト4だが、世界に与えた衝撃は銅メダルより大きい。4大大会初制覇にも大きく前進した。「ワクワクしすぎて冷静さを保つのが大変だった」。体を震わせるほどの歓声は渦を巻き、閉じられた屋根に反響してコート中にこだました。錦織を称えるニューヨークのファンの盛り上がりが、この勝利の価値を証明していた。

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