遼 復活!7年ぶりの完全優勝「支えてもらった」愛妻とハイタッチ

[ 2016年8月29日 05:30 ]

<RAIZAP KBCオーガスタ最終日>18番、ウイニングパットを沈めガッツポーズする石川遼

男子ゴルフツアーRIZAP・KBCオーガスタ最終日

(8月28日 福岡県糸島市 芥屋ゴルフ倶楽部=7151ヤード パー72)
 妻にささげる復活優勝だ。首位から出た石川遼(24=CASIO)が5バーディー、2ボギーの69で回り、通算15アンダーの273で2位に5打差をつけて今季初優勝、ツアー通算14勝目を挙げた。今年2月には腰痛を理由に主戦場の米ツアーから離脱。これが日本ツアー今季2戦目だが、初日から首位を一度も譲らず、09年サン・クロレラ・クラシック以来自身2度目の完全優勝を達成。3月の結婚後は初めての美酒となった。ケガに苦しんだ石川が愛妻の支えで完全復活を果たした。

 最終18番。30センチのパーパットを丁寧にカップに沈めると、石川は喜びをかみしめるようにボールを拾い上げ、ギャラリーの声援に応えた。2月に腰痛を発症して米ツアーを離脱し、先月の日本プロゴルフ選手権で復帰したばかり。「このタイミングでの優勝は早かったと思う。ショットはぶれていたが、リズムを保つという軸はぶらさずにできたし、練習してきたアプローチ、パットが良かった」と実感を込めた。

 自ら悪い流れを断ち切った。6番パー5は第2打をグリーン手前のバンカーに入れたが、第3打をピンそば80センチに寄せてバーディーを先行させた。だが、10時ごろから雨脚が強まると、10番はボギーで2位と4打差。11番のティーショットも左の林に打ち込むピンチとなった。だが、直後の11時43分に雷雲接近のため中断。ここで切り替えた。「クラブハウスのレストランでたい茶漬けを3杯食べた」とリフレッシュ。午後2時41分の競技再開後は、残り170ヤードの第2打をPWでグリーン右6メートルに乗せてパーセーブ。12番パー3では8メートルのバーディートライをねじ込み、後続に影を踏ませなかった。

 復活を愛妻が支えた。2月のフェニックス・オープンで腰痛が悪化し、プロでは最長となる約5カ月間の長期離脱を強いられた。椎間板症、仙骨の炎症と診断され、20ヤードのアプローチで体を旋回させるだけで激痛が走った。日常生活に支障はなくゴルフだけができないことにストレスがたまった。「テレビで他のプロがプレーしているのを見て、どんどん離されてしまうのではないかと感じたし、“何やってるんだろう”と思った」と焦りだけが募ったという。

 ゴルフもままならない3月に以前から交際していた中学の同級生と結婚。練習できない分、2人で過ごす時間は増え「一緒にいるだけで心がフラットになる。ポジティブな人なので、非常に支えてもらった」。その後は安静、負担のかからないトレーニング、アプローチ練習と段階を経て、5月末にはアイアンでフルスイングできるまでに回復。プロ仲間に「2日間しかゴルフができない。4日間は回れない」と苦悩を打ち明け、ラウンドリポートを務めた5月上旬の中日クラウンズで「ギャラリーの中に入ってもオーラがなかった」と先輩プロから心配された姿はなくなった。「ゴルフができるようになると急速にメンタルとフィジカルに切れが出てきた」。調子を取り戻すまでに時間はかからなかった。

 表彰式後は、クラブハウスで妻とハイタッチ。苦しい時期をともに乗り越えた最愛の人に最高のプレゼントを渡すことができた。「結婚後、こうやって勝てたことは大きい。嫁さんと一緒にいる時間が増えて、人生という大きな枠で見れば悪くない5カ月だった」。細身の24歳が一回りたくましくなって帰ってきた。

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