【世界のアスリート】54歳スキッパー 肺がん乗り越え6度目五輪でついに金!

[ 2016年8月18日 12:28 ]

セーリングの混合ナクラ17級で優勝したアルゼンチンのランヘ(左)とカランササロリ(AP)

リオデジャネイロ五輪セーリング・混合ナクラ17級

(8月16日 グロリアマリーナ沖)
 海風が心地よかった。サンティアゴ・ランヘ(54)の頬を涙が伝う。今大会からセーリングに採用された男女混合のナクラ17級。クルーのセシリア・カランササロリ(29)と組んだアルゼンチンの熟練スキッパーは、6回目の五輪でついに自身初の金メダルを獲得した。

 「自分にとっては幸運だったのだと解釈している」。スペインのバルセロナに滞在していた昨年、体調に異変を感じて診察を受けた。告げられた病名は肺がん。目の前が真っ暗になった。すぐに左の肺を摘出。早期だったことが幸いして生き延びることができた。
 過去5度の五輪で銅メダル2個を獲得しているセーリング界のレジェンドは、残った一つの肺を頼りに前を向く。術後6日目にエアロバイクをこぎ始め、1カ月後に海に戻った。完全復帰まで半年。リオデジャネイロ五輪には間に合った。

 低得点方式のこの種目でオーストラリアとオーストリア艇に1ポイント差をつけて優勝。その瞬間、49er級にアルゼンチン代表として出場している息子のヤーゴ(28)とクラウス(21)が、海を泳いで父のいる双胴艇までやってきた。「子供たちにどれほど励まされたか分からない。私は幸せだ」と今大会最年長のメダリストは2人を抱きしめてまた涙。「彼は全てに前向き。それが私にもいい影響を与えてくれた」と語ったカランササロリも歓喜の輪に加わった。

 「同じような状況にいる人が何かを感じてくれればそれでいい。でも私にとってがんは道に転がる石のようなもの。気にはしないよ」。ランヘが勝ったもう一つの過酷なレース。54歳のがんサバイバーは、石につまずいたことを悔やんではいなかった。

 ◆サンティアゴ・ランヘ 1961年9月22日、ブエノスアイレス郊外のサンイシドロ出身の54歳。04年アテネ五輪と08年北京五輪のトルネード級で銅メダルを獲得。世界選手権の同クラスでは03年3位、04年1位、06年2位。14年世界選手権のナクラ17級では2位。

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