スッキリしないサウマキの代表選出 遅れた訂正に隠ぺいの疑念も

[ 2016年5月24日 08:10 ]

大東大のホセア・サウマキ

 今月10日に発表されたラグビー日本代表43人に選出されたトンガ出身のウイング、ホセア・サウマキ(大東大)が、現状で日本代表の資格を持たないことが発覚した。来日前の12年10月、トンガ代表として7人制のワールドシリーズ(WS)オーストラリア大会(ゴールドコースト)に出場した履歴が、国際統括団体ワールドラグビー(WR)の定める代表1カ国規定に抵触するためだ。5月30日には6月のカナダ、スコットランド戦に向け、実際に招集する30人を発表する。サウマキがここに含まれていたら大問題だったが、この点では大事に至らずに済んだ。ただ、防げたはずのミスが発生した経緯、その後の日本協会の対処を見ていると、胸につっかえた物がスッキリしない。

 私は今回の事態が発生した主因は、協会の怠慢にあると思う。過去に日本代表でキャップを獲得した選手ならともかく、初めて招集する外国籍選手の場合、履歴調査を行って然るべきだ。大東大ラグビー部アドバイザーで、サウマキをスカウトした本人である元日本代表のラトゥ志南利(しなり)氏は本紙の取材に「僕は(7人制トンガ代表歴を)知っていた」と話している。大学側に電話一本入れれば判明したことを、把握できていなかった。この事実は重い。

 さらに日本協会は発表2日後の12日には事実を把握したとしているが、15人制代表強化責任者の薫田真広ディレクター名で「コメント」を発表したのは18日だった。そもそも10日にメディアを集めて記者会見を開いており、誤りがあれば即訂正するのが筋のはず。僭越ながら本紙が16日に第一報を伝えなければ、30日の発表でサウマキを純粋な「落選」扱いとし、日本代表資格がなかったという事実を隠し通すつもりだったのではないか――。そんな疑念すら抱く、訂正発表の遅さだった。

 今回の件の被害者は、サウマキ本人に他ならない。現在も日本協会はWRに連絡を取り、何らかの方法でサウマキを日本代表に選出する方法を模索しているが、まずは迅速かつ明確な回答を得ることだ。時間が掛かれば掛かるほど、日本代表への道が完全に断たれた場合、母国トンガ代表を目指すための時間が短くなる。日本代表になり得る選手か否かに関わらず、一国の協会が一選手の人生を翻弄(ほんろう)するようなことはあってはならない。(阿部 令)

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2016年5月24日のニュース