バレーボール“整った環境”の功罪 五輪に必要な「図太さ」を強化するには

[ 2016年5月21日 09:40 ]

<日本・ドミニカ>ドミニカに勝利し、歓喜の宮下(中央)ら日本代表

 アスリートが五輪で結果を残すため、乗り越えなければならない条件の1つが環境への対応と言われる。食事や時差などに加え、アウェー感たっぷりの会場の雰囲気。いつもと異なる条件下で、持てる力を最大限発揮することができる「図太さ」を、選手選考の段階から重要なファクターとしている競技団体もある。五輪イヤーに開催地のプレ大会に出場したり、合宿を敢行したりするのは、経験という引き出しを加える強化策の一環であることは言うまでもない。

 そこで考えさせられたのが、現在東京で世界最終予選を戦っているバレーボールのこと。他チームとは異なり試合時間が固定されている日本が、ホームアドバンテージを持っていることは間違いないし、それは生かすべき要素だろう。ただし、それが「いつものこと」となればどうだろう。

 バレーボールの「三大大会」とされるのは五輪、世界選手権とW杯。それぞれ4年に1度の開催だが、五輪前年に五輪の出場権を懸けて戦うW杯は1977年以降、男女とも日本で開催され続けている。世界選手権でも、98年以降の最近5大会のうち男子は2大会、女子は3大会が日本で開催され、18年の女子も日本開催が決まっている。

 もちろん、開催地の受け入れ態勢が整っていなければ大きな国際大会を開くことは不可能。日本の場合、バレーボールの注目度が高い=テレビ放映を含めた環境が整っており、資金などの懸念がない円滑な大会運営を期待する国際連盟の期待が高いことは分かる。その側面は評価されるべきとも思う。しかし、それが強化の側面から見れば、どうなのだろうか。

 ただし、前述の77年以降、五輪で日本がメダルを獲得したのは女子の銅メダル2個のみ。84年ロサンゼルスと12年ロンドンである。男子にいたっては皮肉にも76年モントリオールの銅メダル以降、表彰台は遠い存在となった。ちなみに、バレーボールが五輪正式種目となったのは64年東京大会。その2年前、ソ連(当時)で開催された世界選手権で女子は優勝し「東洋の魔女」伝説へとつなげている。

 もちろん、競技レベル向上などの要素もあるため、国内開催だけが結果に影響を及ぼしているとは言えない。だが、どこかで図太さとは対照的な「線の細さ」を感じてしまうのは私だけだろうか。もちろん、ホーム開催の重圧に慣れていることを利点とし「20年東京はおまかせ!」であることも期待したいところではあるのだが。 (記者コラム・首藤 昌史)

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2016年5月21日のニュース