リオへの道閉ざされた世界記録保持者・鈴木へ 4年後、東京のゴールで待つ

[ 2016年4月20日 08:45 ]

昨年8月の世界選手権で途中棄権し、涙を流す鈴木雄介

 18日、リオデジャネイロ五輪の競歩代表が発表された。昨夏の世界選手権50キロで銅メダルを獲得した谷井孝行(自衛隊)ら、20キロも合わせて計6人。現在の日本陸上界で唯一の世界記録保持者の名前はなかった。

 富士通の鈴木雄介。今のところ、悲運のレコードホルダーとして名を刻む。

 昨年3月の全日本能美大会、鈴木は20キロで1時間16分36秒の世界新記録をマークした。男子種目では陸上界50年ぶりの偉業に当然、周囲は過熱した。取材依頼は殺到、鈴木は競歩の未来を思い、知名度アップのために快く応じた。

 多忙を極め、調整に狂いが生じ、股関節周辺を痛めた。金メダル最有力候補だった昨夏の世界選手権は無念の途中棄権。リオの選考会に向けて、「焦りはある」と正直な思いを漏らした。少しでも早く患部を回復させるため、複数の治療院を転々とした。

 選考会のスタートラインに立つことすらかなわず、リオへの道は閉ざされた。

 リオでメダルの期待が懸かる谷井は言う。「出られなかった選手の悔しさも背負って、自分たちは頑張らないといけないんです」。鈴木は記録樹立と同時に、競歩の全てを背負ってしまったように映る。今は“重荷”を下ろし、治療に専念すればいい。鈴木の思いを背負う選手がいるのだから。

 僕は鈴木を数回、取材した程度に過ぎない。もちろん、覚えてはいないだろう。本来なら直接、本人に伝えたいところだが、術を持たないため、ここに記す。4年後、僕はTOKYOのゴールで待っている。君が、トップで戻ってくるのを。(杉本 亮輔)

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2016年4月20日のニュース