萩野復活リオ切符 日本新逃すも今年世界1位の好タイム

[ 2016年4月5日 05:30 ]

優勝した萩野はリオ五輪出場を決め、笑顔(手前は瀬戸)

競泳リオデジャネイロ五輪選考会兼日本選手権第1日

(4月4日 東京辰巳国際水泳場)
 コウスケが復活だ――。男子400メートル個人メドレー決勝は12年ロンドン五輪銅メダルの萩野公介(21=東洋大)が4分8秒90で5連覇。リオデジャネイロ五輪の派遣標準記録を突破し、2大会連続五輪出場を決めた。男子100メートル平泳ぎは北島康介(33=日本コカ・コーラ)が59秒62で準決勝を1位通過。5日の決勝で決まる五輪5大会連続出場に王手をかけた。初日は萩野のほか、女子400メートル個人メドレーで2人が五輪切符をつかんだ。

 満開の桜のように、春にピークを合わせてきた。萩野は予選から15年世界選手権銀メダル相当の記録を出し「感覚より速い」と手応え。トップギアに上げた決勝では「プールに乳酸たくさん落としてやろう」と意気込んだが、突っ込み過ぎて空回り。圧勝の5連覇にも「出直します」と反省した。怖いもの知らずだった4年前とは違い、重圧を背負う選考会は「怖かった」という。前夜は「もやもや」して寝付きが悪かったが、エースらしく今季世界ランク1位の記録で切符をつかみ「五輪に挑戦する資格を得た。期待してもらっている分、倍にして返したい」と活躍を誓った。

 ロンドン五輪後は13年のこの大会で史上初の5冠を達成し、14年仁川(インチョン)アジア大会では日本男子初の個人種目3冠を飾った。だが、昨年6月末のフランス遠征中に自転車で転んで右肘を骨折し、夏の世界選手権を欠場。どん底に突き落とされた。だが、「泳げない時期だからこそ、鍛えられる部分がたくさんある」とただでは起きなかった。

 2週間後にギプスが外れると、棒の中央から垂らしたヒモ先に約2・5キロのおもりを付け、両手で両端を持って棒を回し「細くなった」前腕の筋肉回復に努めた。右肘は以前のように伸び切らず、練習後のアイシングも欠かせない。ケガから約1カ月後に泳ぎ始めた時も「肘に1、2キロのおもりをつけて泳いでいる感じ」と背泳ぎのバランスが崩れた時期が続いた。

 秋に周囲が休養を取る中、「自分にはオフがない」と下半身を鍛えて弱点の平泳ぎを強化。北島のフォームを見て盗み、瀬戸が「平泳ぎも強くなっている」と成長を認めるほどになった。そして、東洋大の平井伯昌コーチから「人間的にも成長してほしい」と昨秋、大学の主将に任命されると、勝負が近づくにつれ精神面も充実してきた。

 五輪では競泳の大会初日に行われる種目だけに、日本に勢いをつける意味でも期待は大きい。悲願の金メダルへ「あのタイムが100%の実力じゃない。それを証明するためにも心を強くしたい」と力を込めた。

 ▼平井伯昌コーチ 去年まで人を見てレースをしていたが、今日は自分のレースを貫いた。前回(4年前)は怖いもの知らず。今回は狙っての大会で違う。将棋でいう持ち駒が増えた。(勝ちにこだわってのレースを評価)

 ◆萩野 公介(はぎの・こうすけ)栃木・作新学院3年だった12年ロンドン五輪男子400メートル個人メドレー銅メダル。13年日本選手権で史上最多5冠。世界選手権は13年に2種目で銀メダルを獲得したが、15年は右肘骨折で出場を逃した。東洋大4年。1メートル77、72キロ。21歳。栃木県出身。

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