稀勢、変化で9連勝 愚直な男が…悲願Vへ執念「いい反応」

[ 2016年3月22日 05:30 ]

<大相撲春場所9日目>立ち会い稀勢の里(右)の変化について行けず突き落としで敗れた琴奨菊

大相撲春場所9日目

(3月21日 エディオンアリーナ大阪)
 悲願の初優勝を狙う大関・稀勢の里は1敗だった大関・琴奨菊を注文相撲で突き落とし、9連勝で単独首位を守った。綱獲りの大関相手に珍しく勝負に徹する相撲を取り、優勝に対する執念を見せつけた。優勝争いは全勝の稀勢の里を、白鵬と豪栄道が1敗で追い、日馬富士、鶴竜、琴奨菊ら7人が2敗に並ぶ展開となった。
【9日目取組結果】

 どんな時でも愚直に真っすぐ立つことを売りにしていた稀勢の里にしては珍しい光景だった。琴奨菊の当たりが低すぎるとみるや頭と頭でぶつかった瞬間に右に動いて突き落とし。わずか0秒7の“心理戦”を制し、唯一の全勝を守った和製大関は「いい反応だった。よく見られたと思います」と納得の言葉を述べた。

 幕内史上最多となる59回目の対戦だったが、こんな結末は初めて。この力士だけは絶対に変化はないと信じ切っていた琴奨菊の心理の裏をかく頭脳的な動きだったとも言える。八角理事長(元横綱・北勝海)は稀勢の里が注文相撲を取ったことに関し「見たことない。褒められた相撲じゃないけど優勝への執念でしょう」と許容範囲内であることを認めた上で「今までは要領が悪かったというか正直過ぎたからね」とも言った。

 振り返れば、11年九州場所後に大関に昇進してから白鵬を筆頭に把瑠都、鶴竜ら外国勢が繰り出す変化を大一番でことごとく食い、賜杯を奪われてきた。しかも、先場所は琴奨菊に10年ぶりの日本出身力士の優勝までも先に奪われ、誰よりも悔しい思いを経験。「結果はああなったけど」と取組後の土俵上ではどこかバツが悪そうな表情を浮かべたが、一本気過ぎた性格に幅が出てきていることは確かだ。

 この日の朝。優勝35度の白鵬がくしくもこんなことを言っていた。「相撲は脳と脳のチェスですからね。裏の裏を読み、そのまた先を考える」。そして、稀勢の里について「先場所の9勝でこれではいけないと思ったのだろう」とメンタルの変化について言及していた。心の面で相手を上回らないと相撲は勝てない。プライドよりも勝負に徹した相撲を披露した稀勢の里は「積み重ねてきたものがあります」と初優勝に向けて過去の反省を冷静に生かしている。

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