【有森裕子の目】粘り生んだマラソン田中智美の闘志&冷静さ

[ 2016年3月14日 08:52 ]

小原怜(右)とのデッドヒートを制して日本人トップでゴールした田中智美

名古屋ウィメンズマラソン

(3月13日 ナゴヤドーム発着)
【有森裕子の目】

 たった1秒でも勝ちは勝ち、負けは負け。最後の一騎打ちは技術うんぬんではなく、何が何でもリオに行きたいという気持ちが田中の方がほんのわずかに強かったということでしょう。素晴らしいレースでした。

 フォーム的に彼女の走りは腕の振りに一つもムダがないのが特長です。小原に追いつかれた時に少し上体が立ちかけましたが、最後まで大きく乱れることはなかった。世界選手権の代表から落選した時、彼女はむしろ山下監督よりも早く気持ちを切り替えていました。絶対に負けないという闘志と持ち前の冷静さがうまくマッチしたことが、最後の粘りにつながったのだと思います。

 とはいえ、キルワがスパートした時についていけなかったのも事実。世界とはまだまだ差があることを忘れてはいけません。田中を含めリオを走る3選手には失敗を恐れず果敢にチャレンジしてほしい。同じ課題でも4年後の東京につながるような前向きの課題を残してくれることを期待しています。(92年バルセロナ五輪銀、96年アトランタ五輪銅メダリスト)

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2016年3月14日のニュース