福士欠場で女子は無風 今度は男子を考える

[ 2016年3月3日 08:30 ]

公務員ランナーの川内

 女子マラソンの福士加代子が名古屋ウィメンズを欠場する。前回のコラムで書いたように、予想通りだ。これで女子マラソンのリオデジャネイロ五輪代表は世界選手権7位で内定済みの伊藤舞、大阪国際で日本陸連の設定記録(2時間22分30分)を破る2時間22分17秒で圧勝した福士、名古屋の日本人1位で決まりだろう。

 女子選考はほぼ無風になったが、男子はどうか。最後の選考会・びわ湖毎日マラソンには、公務員ランナーの川内優輝がエントリーしている。男子は世界選手権での内定者はなく、国内3大会の日本人上位3人から総合的に選考される。昨年12月の福岡国際は佐々木悟(旭化成)が2時間8分56秒で日本人1位。川内は2時間12分48秒で日本人4位だった。

 日本陸連の選考基準では国内選考会に複数出場する選手は、最初の選考会だけが評価される。例外は、2度目(あるいは3度目)の出場で設定記録(2時間6分30秒)を突破した場合のみ。川内は現時点では選考対象外で、びわ湖毎日で2時間6分30秒を破った時だけ五輪出場への道が開ける。自己ベストは2時間8分14秒で、設定記録突破はあまりにも非現実的だ。

 川内にとってのびわ湖毎日のテーマは、福岡国際のリベンジを果たし、17年ロンドン世界選手権への足がかりをつかむこと。五輪代表は既にほぼ諦めている。では、なぜ川内の存在がクローズアップされるのか。それは、有力選手が集った東京が、想定外の結果だったから。日本人トップの高宮祐樹(ヤクルト)で2時間10分57秒。このタイムでの代表入りは、はっきり言って、ない。

 びわ湖毎日で日本人2人が2時間8分台でゴールすれば、佐々木とこの2人でスンナリ決まるだろう。だが、川内が日本人トップだったら?2時間6分30秒を切れば文句なしだが、設定記録に届かなくても佐々木よりも早いタイムでゴールすると、国内選考会で最も早かった選手が落選する。日本陸連は2時間6分30秒を切らない限り、川内を選ばない。これは断言できる。そういうルールだから。

 ただ、福士の騒動でも痛切に感じたが、ルールは世間にしっかりと浸透していない。川内がトップの場合、「なぜ川内を選ばないんだ!一番、早いんだぞ!」という声が上がるに違いない。それでも、日本陸連はまったく気にしない。これも断言できる。良くも悪くも“ブレない”組織。それが日本陸連だから。

 もちろん、複数の実業団ランナーが意地を見せれば、男子も無風で終わる。だが、川内が激走すれば、選考基準通りとはいえ、日本陸連がやり玉に挙がるのは必至。最後に、川内の弟・鴻輝君の言葉を紹介しよう。「こういう時の兄貴って、強い気がするんですよね。今回は挑戦者なので、得意の反骨精神が発揮されると思います」――。僕も、まったく同意見だ。(杉本 亮輔)

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2016年3月3日のニュース