琴奨菊夫人「有言実行 ほれ直しました」

[ 2016年1月25日 09:00 ]

タイを持ち上げる琴奨菊(前列右)と笑顔で写真に納まる祐未夫人(前列左)、父・菊次一典さん、母・美恵子さん

大相撲初場所千秋楽 琴奨菊 突き落とし 豪栄道

(1月24日 両国国技館)
 国技館2階の通路から優勝の瞬間を見届けた祐未夫人は感極まった。昨年7月に婚姻届を提出した際に「必ず優勝する」と誓った夫が、その約束を果たした。「有言実行ですね。輝いてました。ほれ直しました」。声が弾むのも当然だった。

 度重なる故障に苦しんだ琴奨菊を支えたのが祐未さんだった。3年前に知人の紹介で交際がスタート。その数カ月後、琴奨菊は13年九州場所で右大胸筋断裂の重傷を負った。それまではケガをしては1人落ち込んでいた琴奨菊だが、この時は違った。祐未さんは病院に付き添い「2人で頑張って乗り越えよう」。愛する人の優しい言葉が大関を奮い立たせた。

 祐未さんは結婚後、フードマイスターの資格を取得。油を使わず揚げ物ができるオーブンレンジも購入した。「胃に負担をかけないように、消化のいいものを作っています」。食卓にはひじきなど体にいい食事が並ぶ。毎晩マッサージで体をほぐし、かかとのひび割れを防ぐためにクリームを塗るのも祐未さんの仕事だ。そして、相撲の話は一切せず、いつも変わらぬ笑顔で接する。琴奨菊にはそれが何よりのリラックスだった。

 そんな祐未さんの頑張りに応えようと、琴奨菊は心を入れ替えた。「以前は1勝するたびに喜んで、私も一緒になって喜んでいました。今場所はすぐ次の取組のことを考えていました。15日間終えるまで心から喜んだことはなかったと思う」。優勝に無縁だった大関の心も大きく成長した。

 今場所は披露宴の準備にも追われ、なかなか会場に足を運べず「同じルーティンで過ごしてました」と毎日自宅で琴奨菊の祖父・一男さんの遺影を抱いて応援を続けた。観戦に訪れたのは13日目に豊ノ島に負けた直後の14日目から。最後は勝利の女神となった。

 ≪琴奨菊Vアラカルト≫

 ▽スロー初優勝 新入幕から所要66場所で初めて賜杯を抱くのは、史上2位の遅さ。初土俵から84場所は史上6番目のスロー記録。

 ▽大関として初制覇 新大関から所要26場所の初優勝は、千代大海の21場所を抜いて昭和以降で最も遅い。

 ▽年長初優勝 31歳11カ月で初めて制するのは、年6場所制となった58年以降では3番目の年長記録。

 ▽福岡県出身 福岡県出身力士の優勝は沖ツ海、魁皇に続いて3人目。

 ▽佐渡ケ嶽部屋 佐渡ケ嶽部屋勢の制覇は08年夏場所の琴欧洲以来、8人目。 

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