スポーツ記者がSMAP東京パラ五輪応援団会見で感じた違和感

[ 2016年1月17日 08:30 ]

 今回のSMAPの分裂報道を聞いて、なるほどそういうことだったのかと納得したことがある。昨年11月10日、20年東京パラリンピックを支援するために設立された「日本財団パラリンピックサポートセンター」の会見にSMAPが出席。中居正広が「これからはSMAPのPの部分をパラリンピックのPにしたい」と発言するなど会見自体は和やかに進んだが、向かって左端に立った木村拓哉だけはずっとそっぽを向いたままニコリともしない。終始怒ったような顔つきで、明らかに異様な雰囲気だった。

 普段の会見とは違い、取材陣はスポーツ記者が大半。まったく裏事情を知らなかったので「やっぱりキムタクは偉いんだな」とか「キムタクって気難しそう」など見当違いの会話を交わしたが、今にして思えば、すでにその頃から分裂をめぐってキムタクと他の4人の間には深い溝ができていたのだろう。今回の分裂報道は、SMAPの人気に期待していたパラリンピック界にも大きな波紋を広げている。

 これまで多くのパラアスリートを取材してきたが、彼ら彼女らの多くが「東京では満員の観客の前でプレーしたい」という同じ願いを口にした。理想とするのは12年のロンドン大会で、各会場はほぼ満員。地元英国の選手が出ない試合でも多くの観客が詰めかけ、惜しみない拍手を送った。08年の北京大会も確かに観客は多かった。だが、それは国策によって動員された、いわば「サクラ」であって、心からの声援とは程遠いものだったという。

 東京はどうか。各種の世論調査を見るとパラリンピック自体に興味がある人は多いが、実際に見に行くかどうかの質問にはほとんどの人が「ノー」と答えている。だがSMAPが来るなら話は違う。実際、11月29日に駒沢公園で行われたパラ駅伝大会にはパラスポーツとしては異例の1万5000人もの大観衆が詰めかけた。もちろん、観客のほとんどはSMAPを見に来たのであってパラ競技を見に来たわけではない。人気タレントを使って観客動員を図ることは手法としては反則かもしれないが、導入部分としてはあっていいと思う。まず会場に足を運んで実際に見てもらわなくては何も始まらないのだから。

 SMAPは日本財団と正式に契約を交わしたわけではなく、いわばボランティアで協力してくれていたという。その気持ちは尊い。だからこそ、これからもずっとパラリンピック界を支援してほしい。それが障がい者スポーツに携わるすべての人々の願いなのだから。(藤山 健二)

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2016年1月17日のニュース