物言いすらつかず…「勝ったと思った」隠岐の海“誤審”で初黒星 

[ 2016年1月15日 05:30 ]

豊ノ島(中央)の右腕が先に土についたかに見えたが、軍配は豊ノ島が隠岐の海を寄り切りで勝ちとなる。行司(左端)は木村晃之助

大相撲初場所5日目

(1月14日 東京・両国国技館)
 平幕・隠岐の海は“誤審”で初日からの連勝が止まった。相手の豊ノ島が先に落ちたように見えた一番の軍配は豊ノ島に上がった。際どい相撲ながら物言いもつかず、スッキリしない初黒星となった。横綱・白鵬は碧山を上手投げで下し、無傷の5連勝とした。全勝は白鵬、琴奨菊、高安の3人となった。

 好調の隠岐の海がまさかの“誤審”被害に遭った。初日から4連勝で迎えた豊ノ島戦。もろ差しを許して押し込まれる苦しい展開だったが、土俵際で粘り、巻き替えた右で逆転のすくい投げを打った。隠岐の海の足は俵の上に残り、豊ノ島が先に落ちたように見えた。

 「(手をつくのが)早かったと思ったし、負けたと思った」豊ノ島は「くっそー」と悔しがった。「残ったと思った。勝ったと思った」隠岐の海は勝ち名乗りを受けようと、そんきょした。

 しかし、軍配が上がったのは豊ノ島。目の前にいた粂川親方(元小結・琴稲妻)ら審判5人からは物言いもつかなかった。場内も拍手や歓声はまばらで、微妙な空気が漂った。井筒審判長(元関脇・逆鉾)は「隠岐の海も残って、一緒ぐらいに見えたけれど、豊ノ島が攻めている分、分がある。物言いがつく一番じゃない」と説明した。

 前日の琴奨菊―安美錦戦でも、琴奨菊の右足甲が先に土俵についたように見えたが、軍配は琴奨菊に上がり、物言いはつかなかった。その一番を担当した審判と今回は5人中4人が同じだった。

 隠岐の海は「近くで(審判の)親方が見ていたし、しようがない。勝負は勝負だから、明日頑張ります」と審判批判こそしなかったが、表情は不満げだった。豊ノ島は「(入門)15年目なので、こんなことがあってもいいんじゃない。サプライズ白星」と喜ぶ一方で、「逆の立場だったら、ちゃんとしてと思う」と相手を気遣った。

 微妙な勝負には審判が物言いをつけ、ビデオ室からの情報を基に確認作業を行うべきだ。その上での判定なら、命懸けで戦う力士たちも納得がいく。ファンに対しても微妙な判定には説明があった方が親切だ。誤審をなくすために他競技に先んじて導入されたビデオ判定が生かされないのは、あまりにもったいない。

 ▽大相撲の審判 審判委員は原則5人が土俵だまりで判定。行司の軍配に異議を感じた場合、速やかに「異議あり」の意思表示を行い協議に入らなければならない。その際、審判長は別の審判委員2人と決まり手係が詰めるビデオ室と連絡を取り公正を期す。土俵上で5人全員で協議して最終的に審判長が裁決。マイクを使って館内に勝敗を伝える。

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