日体大・秋山6区区間新!“下り王子”がシード権獲得の立役者に

[ 2016年1月4日 05:30 ]

日体大6区・秋山(左)は区間新記録の走りで7区・勝亦にたすきをつなぐ

第92回東京箱根間往復大学駅伝復路

(1月3日 箱根・芦ノ湖~東京・大手町5区間109・6キロ)
 平地では味わえないスピード感と、高速で流れる景色がたまらない。日体大の秋山清仁(3年)が、2年連続の6区で激走だ。区間4位だった昨年、山下りに魅せられた。「6区が大好きになった。この1年、下りのことだけ考えていた」。58分9秒は従来の記録を22秒更新し、今大会唯一の区間新。往路13位から6区終了時に7位まで順位を押し上げ、総合7位で2年ぶりシード権獲得に導いた。

 「自分でも区間新までいけると思わなかった。前を追いかけようという思いだけで走った」

 昨年の箱根まで駅伝とは無縁だった。陸上を始めた東京・志村五中では長距離部員が秋山だけ。順天高に進学したが、上級生を含め長距離6人で、7区間の高校駅伝に出場できなかった。3年の5月からは部員は秋山一人に。都の強化合宿で一緒に汗を流した他校の仲間が、秋には駅伝に出場している。「友達が走っているのに走れない。凄く苦しかった」と吐露した。

 15年、日体大も秋山も苦境に陥った。箱根駅伝で15位惨敗に終わり、3月に別府健至前監督から渡辺正昭監督に交代。14年の箱根1区区間賞のエース・山中秀仁は故障を理由にチームを離れた。秋山も夏に右足底部を痛め、10月の箱根予選会、11月の全日本大学駅伝でメンバーに入れず。だが、どんなに逆風にさらされても「駅伝を走りたい」という思いは揺るがなかった。状態を上げ箱根のスタートに立ち、そして一気に駆け下りた。

 17年春の卒業後は教員志望。第一線で競技を続ける予定はないが、アスリートとして刺激を受ける存在がいる。日体大の2年後輩で、体操男子床運動の世界王者・白井健三。“ひねり王子”とは学内ですれ違う程度だが、「世界大会とかで戦っているのを見ると、凄いなと思う」。今の人生設計なら、来年の箱根が最後の駅伝になる可能性も。「1年間、またメンバーに入れるように頑張っていきたい」。日体大の“下り王子”が、集大成のアタックを見せる。

 ▽6区山下り 5区山上りの“裏返し”で平地でない分、大差のつきやすい区間。スタートして約4キロ上ったあとは、箱根湯本駅まで一気に下る。高低差が800メートル以上あり、急カーブも多いため、コース取りが重要。オーバーペースになると、終盤の約3キロの平地で足が止まることもある。朝の箱根山中は気温が低いため、思わぬ腹痛やけいれんに見舞われるケースも。スピードに乗っている分、受け渡すタイミングが難しく給水は行われない。レース当日までの水分コントロールには細心の注意が必要となる。

 ≪OBでは谷口浩美らが区間賞≫日体大の6区区間賞は71、73年の今野秀悦、76~77年の塩塚秀夫、78年の坂本亘、81~83年の谷口浩美、89年の川嶋伸次以来、27年ぶり6人目。谷口はマラソンで91年世界選手権金メダル、92年バルセロナ五輪8位、96年アトランタ五輪19位。川嶋もマラソンで00年シドニー五輪に出場して21位だった。

 ◆秋山 清仁(あきやま・きよひと)1994年(平6)11月19日生まれ、東京都板橋区出身の21歳。志村五中で陸上を始める。順天高から日体大に進学し、昨年の箱根駅伝は6区区間4位と好走した。5000メートルの自己ベストは14分26秒78、1万メートルは29分28秒64。趣味はサイクリングとカラオケ。1メートル69、56キロ。

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