水球日本32年ぶり五輪へ 勝負の“スーパー邪道”戦法

[ 2015年12月20日 09:30 ]

 水球の男子日本代表が強敵カザフスタンを下し、リオデジャネイロ五輪出場に大手をかけた。アジア最終予選最終日となる20日に中国を破れば、1984年ロサンゼルス五輪以来32年ぶりの切符をつかむ大一番。開催国枠で出場できる20年東京五輪に弾みをつけるためにも、32年間閉ざされた扉を実力でこじ開けたい。

 昨年の仁川アジア大会は日本が中国を12―9で振り切った。互角の勝負を繰り広げてきたライバルは最近になって監督が解任されるなど不安定。日本は隙を突きたいところだが、地元・中国が他国のテレビカメラを一切排除したことで関係者は「中国の笛」に警戒感を強める。7大会連続で五輪を逃してきた日本代表。歴史を変えるために大本洋嗣監督は「30年出られなかったのには何か理由がある。30年間やらなかったことをやろう」と勝負に出た。

 ポイントは監督が「肉を切らせて骨を断つ」と例えるパスライン・ディフェンスだ。守備に回った時、通常であればゴールへとつながる道を意識するものだが、新システムは自分がマークする相手にパスが通らないことを意識。ボールをカットすれば、日本が武器とするスピードを生かして、カウンターで得点を奪いにいく。バスケットボールの「ディナイ(遮断する)ディフェンス」を参考にして大本監督が1年前から取り入れた。

 監督自ら「スーパー邪道」と苦笑いする戦法は当初、選手に受け入れられなかった。「信用されなかった」と振り返るように、ミーティングでは耳を傾けても、水に入れば従来のマンツーマン・ディフェンスを行い、前へ進まず。昨年のアジア大会で結果を残したことが転機になり、ようやくチームに浸透。今夏の世界選手権ではカザフスタンよりも格上の地元・ロシアを撃破した。

 勝利の喜びがチームの絆を固める中、カザフスタンを撃破した今、恐らく最高のチーム状態であると思う。水中の格闘技とも言われる競技では体格差のハンデは日本人の永遠のテーマ。だが、スピードと頭脳を生かしたプレースタイルは日本の強みである。五輪出場を懸けた国際大会において、テレビ放送が拒否されることなど言語道断ではあるが、冷静な戦いぶりで胸が熱くなるような朗報を敵地から届けてほしい。(記者コラム=宗野 周介)

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2015年12月20日のニュース