ジャパンのジャージー夢見て来日 目を引くクラスカのプレー

[ 2015年11月16日 09:00 ]

 ノーマークだった分、そのプレーの鮮烈さに目を引かれた。ラグビーブームの中で13日に開幕したトップリーグ。日本代表選手はもちろん、各チームのルーキー、あるいは大物外国人がどんなプレーをするかを楽しみに取材した。14日の東芝―クボタ戦(秩父宮)では東芝所属の日本代表選手5人のうち、ロック大野を除く4人が出場。さすが、と思わせるプレーを見せてくれたのだが、彼ら以上に11番の選手に強く引かれた。

 ニコラス・クラスカ。フランス人の父、タイ人の母を持つという通り、顔の見た目はどことなくアジアンテーストが漂う26歳。前半6分のリーチ、後半3分の大島と、トライにつながるラストパスを出す前のランニングスキルが実に素晴らしかった。スピードを保ちながら小回りを利かせ、片手をかけられてもすり抜けていく。冨岡鉄平監督は「イメージは小野沢。でも小野沢よりも強くて、スピードもザワくらいある」と言う。日本代表歴代2位の81キャップを保持し、「うなぎステップ」で長らくジャパンをけん引した名ウイングと比較するのもうなずけるパフォーマンスだった。

 フランスのプロリーグ「トップ14」のラシン・メトロ92などに所属していたが、いわゆる1軍レベルでのプレー経験はないという。日本でのプレーを目指して履歴書を複数のトップリーグチームに送ったところ、東芝のみ反応があり、テストを経て昨年12月に入団が決定。英語、フランス語、タイ語に加え、「習い始めて7カ月くらい」という日本語もかなりの上達度。1年もたてば通訳を介さずに会話できると思えるほどだ。

 「可能性があるならば」と夢見るのは日本代表でプレーすること。日本国籍を持たないクラスカが代表入りするには、居住歴3年以上を満たすことが条件となる。18年4月に代表入りできたとしても、19年9月開幕のW杯日本大会開幕までは1年半しかない。厳しい条件となるが「いいチャレンジになると思う」と高い壁を乗り越えようとするその気概も、実に胸を打つものがあった。

 4年後のW杯。若手を中心に多くの現役選手が目標とする舞台だが、ジャパンのジャージーを着られるのは、たった31人だけだ。今年のW杯の日本代表でも、大学からラグビーを始めて日本代表最多キャップを保持するまでに至った大野、関西大学リーグ2部の花園大から彗星のごとく現れたNo・8マフィ(NTTコミュニケーションズ)ら、異色の経歴を持つ選手は多数いた。多様性を受け入れる器の大きさこそ、ラグビーというスポーツの魅力。19年のヒーローは誰か。そんな視点を持ってトップリーグや大学ラグビーを見ると、楽しみは2倍にも3倍にも広がる。 (阿部 令)

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2015年11月16日のニュース