英紙記者が見たエディーJ 日本の躍進はラグビー界の縮図変えた

[ 2015年10月12日 06:35 ]

<日本・南アフリカ>後半、トライを決めた五郎丸(左)を祝福する日本代表フィフティーン

 南アフリカ撃破で世界を驚かせたエディー・ジャパン。W杯での活躍ぶりはラグビーの母国・英国でも連日報じられた。日本戦も取材した英サンデー・タイムズ紙のスコットランド代表担当記者、マーク・パーマー氏(37)がスポニチ本紙に“ジャパンの衝撃”を寄稿した。

 今回のW杯に日本は新風を吹き込んだ。日本の躍進はラグビー界の縮図を変えたとさえ思っている。

 過去の歴史をひもとくと、日本の戦績は91年大会でジンバブエから挙げた1勝のみ。開幕前にエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)が「我々には8強まで勝ち進む力がある」と宣言しても、私を含む英国人記者たちは誰も耳を傾けようとしなかっただろう。しかし、1次リーグ突破へあと一歩というところまで迫った今、我々の考えは根底から覆された。それほど日本は大きなインパクトを与えた。

 日本の活躍を語る上で、ジョーンズHCの存在はどうしても無視できない。03年大会では母国オーストラリアを決勝へ導き、07年大会ではチームアドバイザーとして南アフリカに栄冠をもたらした。国際舞台で実績のない日本を率いることは、彼の名声に傷がつく危険もはらんでいたが、そんな不安はただの取り越し苦労だった。

 策士ジョーンズHCの采配が際立ったのが、初戦の南アフリカ戦だ。身体能力で勝る王者を封じ込めようと、日本は無尽蔵のスタミナを駆使してアグレッシブに動いた。特に何度も何度も仕掛けた低いタックルは非常に効果的だった。組織力こそ日本の最大の武器だろう。

 もちろん、選手たちの奮闘も称賛に値する。勝負を仕掛ける時は「熱く」、我慢の時は「冷静に」。メリハリのついた動きは南アフリカを大いに苦しめた。また、選手一人一人の質の高さも目についた。判断力が光るSH田中史朗、正確なキックを蹴り込むFB五郎丸歩、チームに活力をもたらすリーチ・マイケル、当たり負けしない強さを持つ立川理道らの活躍は特筆に値する。

 スコットランドに敗れた2戦目は、後半10分ごろまでのプレーは良かったが、そこから集中力が切れてしまった。点差ほど実力差はなかったように思う。そして、10日間の準備期間を経て戦ったサモア戦は持ち味である日本のダイナミズムが戻り、目の肥えた英国人の観客をも魅了した。

 スコットランド生まれの私としては日本の8強進出を望んではいなかったが、ラグビーファンの一人としてなら日本の冒険をもう少し見てみたかった。今大会で日本は確かな爪痕を残したと思う。自国開催となる19年大会で、彼らがどこまで成長しているのか――。ラグビー記者として、また楽しみが一つ増えた。

 ◆マーク・パーマー 英国スコットランド北部ストーノウェイ出身の37歳。現在はグラスゴーに拠点を置く。05年からサンデー・タイムズ紙でラグビーを担当し、現在はスコットランド代表担当記者。強豪グラスゴー・ウォリアーズでクラブ広報を務めた経験もある。

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2015年10月12日のニュース