伊調、異次元の完全V!世界大会V13も…自己採点「25点」

[ 2015年9月12日 05:30 ]

女子58キロ級決勝でオッリ(左)を破り優勝した伊調

レスリング世界選手権第4日

(9月10日 米ラスベガス)
 女子58キロ級の伊調馨(31=ALSOK)が完全優勝を飾った。5試合全てでフォールかテクニカルフォールを奪い、相手に1点も与えなかった。五輪と合わせ出場した世界大会は13連覇、連勝記録も100を突破。だが自己採点は「25点」と厳しく、吉田沙保里とともに4連覇を狙うリオデジャネイロ五輪まで求道者の戦いは続く。12月の全日本選手権に出場すれば五輪代表に正式決定する。

 ステップを踏み前傾姿勢で相手をのぞき見る。その目はまるで顕微鏡をのぞき込む科学者のようだ。周りから見れば文句のつけようのない完全優勝。しかし今回の“研究”も伊調には不満の残るものになった。

 「目指しているレスリングができなかった。練習不足。五輪が決まったうれしさよりも悔しいことの方が多い」。自己採点の「25点」は、昨年の「45点」からさらに下がった。優勝を決めた後は、コーチに促されるようにして日の丸を掲げて申し訳程度の笑顔。感極まって号泣した前日の吉田や登坂絵莉の喜びようとはまるで正反対だった。

 準々決勝では2年前に59キロ級を制したサスティン(ハンガリー)を手玉に取った。タックルからバックに回りアンクルホールドで軽々と回す。その強さは相手に「自分は実験台の人形のようだった」と嘆かせたほど。決勝でもオッリ(フィンランド)に豪快な両脚タックルを見舞った。しかし、これも伊調からすれば反省材料だった。

 今大会で狙っていたのは組み手と連係した素早い片足タックル。しかし相手の厳しい組み手に封じられ無意識のうちに大技が出た。瞬発的な反応も練習のたまもののはずだが「理詰めになっていない」と納得しなかった。

 08年北京五輪で2連覇を達成した後は「夢はかなえた」と一時は引退も考えた。休養を経て復帰すると新たな刺激を求めて男子と練習するようになった。技術、体力面で女子と異なる世界に触れ、レスリングを深く追求し始めた。31歳となり、昨年末に右膝、今大会直前の右肩などケガが増えても姿勢は変わらない。

 「理想を追求する姿勢を見失わないようにしたい。反省点、課題が見つけられなくなったらレスリング人生は終わり」。リオで五輪4連覇を達成したとしても、おそらくそれはゴールにはならない。「世界選手権の楽しみはレベルの高い男子の試合が見られること。あしたから楽しみでドキドキしている」

 自分の優勝よりも、そんな話をした時の方がよっぽど伊調の声は弾んでいた。

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