世陸女子マラソン 13、14位でなぜVサイン?悔しさどこへ

[ 2015年9月1日 09:05 ]

世界陸上女子マラソン、ゴールし笑顔を見せる(左から)重友、伊藤、前田

 北京で行われていた世界陸上の女子マラソンで、日本勢がまたメダルを逃した。ゴール後、現地から送られてきた映像の中で違和感を感じたシーンがあった。7位の伊藤舞が日の丸を肩にかけ、13位の前田彩里と14位の重友梨佐が笑顔でVサインをしているシーンだ。

 なぜVサイン?なぜもっと悔しがらないの?と思ったのだ。現地のカメラマンのむちゃぶりでポーズを取ったのかもしれないが、まさか今回の成績に満足しているわけではないだろう。だったらもっともっと悔しがってほしかった。

 これまで五輪代表の内定は前年の世界陸上でのメダルが条件だった。03年のパリ大会では野口みずきと千葉真子が2位、3位でフィニッシュしたため、2位の野口は内定したものの3位の千葉は内定にならないという事態も生じた。結局千葉は五輪に行けなかった。それが今回は7位で五輪に内定だ。もちろん、伊藤は立派に選考基準をクリアしたのだから胸を張ってリオに行っていいのだが、最初からメダルではなく入賞を条件にした陸連の姿勢には疑問を感じざるを得ない。自らリオでのメダルを放棄したとしか思えないからだ。

 要はそれだけ日本のレベルが落ちているということなのだろう。だが、最初から目標を下げていたのでは育つものも育たないのではないか。メダルを獲らなくては内定がもらえないとなれば選手もより高いレベルの練習をせざるをえない。どんなに苦しくてもレースの途中であきらめるわけにはいかない。だが、最初から入賞でOKとなればどうしても守りに入ってしまう。一度先頭から遅れれば追い上げることよりも後ろが気になるのは人情だ。アフリカ勢との終盤の競り合いになった時、この内定条件の違いが影響したと言ったら考えすぎだろうか。

 「入賞で内定」には他の種目との整合性もあるのかもしれない。しかし、女子マラソンを他の種目と一緒にしてほしくはない。まだメダルに手が届く可能性があると思うからだ。それこそむちゃぶりでもいい。目標だけは高く掲げてほしい。夢があるからこそドラマが生まれるのだから。(藤山 健二)

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2015年9月1日のニュース