野獣復活!松本、金「やっとここに立てた」リオ代表へ前進

[ 2015年8月27日 05:30 ]

柔道の世界選手権女子57キロ級で優勝し、笑顔の松本薫(AP)

世界柔道第3日

(8月26日 カザフスタン・アスタナ)
 女子57キロ級で松本薫(27=ベネシード)が復活の優勝を遂げた。コリナ・カプリイオリウ(29=ルーマニア)との決勝では、1分20秒すぎに小外刈りで技ありを奪って優勢勝ち。準決勝、決勝と金メダルを獲得した12年ロンドン五輪と同じ対戦を勝ち上がって頂点に返り咲いた。10年東京大会以来5年ぶり2度目の大会制覇で、来年のリオ五輪代表の座もグッと引き寄せた。

 金メダルを胸に下げ、君が代が流れるのを聴いた。その景色に懐かしさを覚えつつ松本は強くこう思った。「やっとここに立てた。もう一度リオで一番高いところに立ちたい」

 準決勝の相手はフランスのパビア、決勝の相手はカプリイオリウ。それもあの時に経験したものだった。「ロンドンと同じ流れで来ているなと思った。でも今はロンドンではなくアスタナ。確実に取っていこうと思った」。入場時から何かをつぶやき、相手を射抜く“野獣”の視線。それだけを残し、余計な感傷は取り払っていた。

 ロンドン五輪後の12年11月に右肘を手術した。1年以上のブランクを経て世界の舞台に立った昨年大会は2回戦負け。「私は足技の選手だけど、それだけでは通用しなくなる」と大技習得に励み、結果は自分の柔道を見失った。五輪女王の肩書に知らず知らずのうちに縛られていた。

 今大会の代表に選ばれた後も5月のマスターズ大会で初戦敗退を喫し、7月のグランプリ大会でも優勝を逃した。痛感したのは原点回帰の必要性だ。「自分にとって一番大事なことを見失って軽い柔道になっていた」。大胆に投げるのではなく、足技で地道に下から圧力をかけ続ける。今大会は本来のスタイルに立ち返った。

 「まだ100%ではない。100%の時は人間じゃない動きをしている。でも、きょうは相手を見て、反応して、足からつないで、基本を大事にした」。準決勝は上背のあるパビアの圧力に負けず指導差1で競り勝つと、決勝でも動きを止めず、俊敏な右足でカプリイオリウを転がした。「きょうの柔道はしっくりきた。重心を低く、相手に反応することができたし、その点では自分に満点をあげたい」

 五輪金メダリストだけに与えられる金色のゼッケン。時には重圧にもなったが、こう開き直った。「ゼッケンは後ろにあるもの。人からは見えるけど、自分には見えない。過去を引きずっている自分よりも、これから戦いにいく自分を大事にしたい」。久々に見た頂点からの景色。「ロンドンより今の方が強い」という松本には、リオでの連覇とそこで手にする新しい金メダルだけが見えている。

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