【オヤジのぴりから調】トラブル続き東京五輪 世界はあきれ失望している

[ 2015年8月4日 05:30 ]

 夢と希望に満ちあふれているはずの20年東京五輪がトラブル続きだ。新国立競技場の白紙撤回に続き、今度は公式エンブレムがベルギーの劇場ロゴに酷似しているとの指摘を受けた。現時点では組織委員会も制作者も「問題ない」の一点張りであり、今はそれを信じるしかない。だが、肝心なのは事の真偽ではなく、またこういう問題が起こったということだろう。

 先月、東京・千代田区の日本記者クラブで組織委員会の森喜朗会長が記者会見を行った。各社の記者からの質問は新国立競技場に集中したが、会見の最後の方で日本に駐在している外国通信社の女性記者が「東京に開催地が決まって以来、競技会場の変更が相次ぎ、今度は新国立競技場が白紙に戻った。常にきちんと仕事をするという日本の信用に傷が付いたのではないか」と指摘した。今回の一連の騒動を世界はどう見ているか。その答えがこの質問には如実に表れていた。一言で言えば、日本人が思っている以上に世界はあきれ、失望しているのである。

 前回のコラムにも書いたが、東京が五輪開催地に選ばれたのは、04年のアテネ五輪や来年のリオデジャネイロ五輪のいいかげんさに頭を悩ませていた国際オリンピック委員会(IOC)の委員たちが「勤勉な日本人なら安心」と1票を投じたからにほかならない。決して派手な大風呂敷は広げないが、手堅い計画を寸分の狂いもなく日程通りに進める。それが多くのIOC委員が抱いた東京五輪のイメージだった。

 それが実際はどうか。半径8キロ以内に収まるはずだったもっともコンパクトな五輪は他県にまたがる広域開催に変わり、キールアーチを用いた未来的な国立競技場は予算オーバーで白紙となり、エンブレムには他国からクレームがついた。これでは公約違反と言われても仕方がないのではないか。新国立競技場の問題は、もっと事前にコストを精査すれば防げたはずだ。エンブレムにしても、似たようなデザインがないかもっと徹底的にネットで調べるべきだった。当たり前のようにそれをするのが日本人だと世界の多くの人々は信じていたのだから。

 一度失った信用を取り戻すのは容易なことではない。開幕まであと5年。トラブルはもういい。今こそ約束をきちんと守る日本人本来の姿を見せてほしいと思っているのは私だけではあるまい。(編集委員 藤山健二)

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2015年8月4日のニュース