16位で準決勝敗退も…板橋美波が見せた日本人初メダルへの可能性

[ 2015年7月30日 02:00 ]

女子高飛び込み準決勝で、16位に終わり涙する板橋美波

 水泳の世界選手権で女子高飛び込み予選、準決勝が行われ、甲子園学院高1年の板橋美波(15=JSS宝塚)は予選を6位で通過したが、準決勝で16位で敗退。12位までの決勝進出を逃し、今大会この種目でのリオ五輪切符はお預けとなった。それでも、武器である109C(前宙返り4回半抱え型)の「離れ業」を決め、世界と互角に戦える自信を持ち帰った。

 静まり返る会場に、大きな水しぶきが上がり、期待したファンからも、ため息が漏れた。14位で迎えた4本目。予選で109Cを成功させて1つの演技では全体で2番目に高い86・95点を叩き出して、多くのロシア人ファンの注目を集めた。だが、準決勝の2度目の挑戦は入水のミスもあり55・5点。最後も得点を伸ばせず合計305・30点の16位に終わった。五輪切符を逃し「まあ、これが自分の実力なんで」と涙を浮かべた。

 馬淵コーチは好不調の波がある愛弟子の姿に「メンタル面」を課題に挙げながら、予選で109Cを成功させただけに「もったいない」とうなだれた。今後は9月のアジア杯、来年2月のW杯で出場権獲得を目指し、さらなる強化に取り組むこととなる。板橋もすぐに涙を拭い「いつどこで飛んでも決めれるようにしたい」と明るい笑顔を取り戻した。

 飛び込みでソウル、バルセロナ、アトランタと五輪3大会に出場した金戸恵太氏は、敗退した板橋について「予選で立証してくれたように109Cが決まれば世界と互角に戦える」と一定の評価を与えた。1、2位は中国が独占したが、その力強い体の動きと何事もなかったかのように水しぶきひとつ上げず入水する飛び込みは芸術そのもの。日本の10倍以上とも言われる億単位の強化費で金メダル選手を「生産」するシステムが確立されており、結果が顕著に示されている。

 五輪本番では米国と争うように全競技で合計30個以上もの金メダルを獲得するが、そのうち25%を飛び込みでつかんでいる大会もある。ライバル国を金メダル数で上回るため、国家を上げた強化策。金戸氏は「子どものころから世界1位を目指して取り組んでいる」と指摘する。日本の場合は、民間の学校、民間のスクールで腕を磨くが、中国では国の体育学校でほぼ毎日、飛び込み漬けの生活を送る。淘汰される選手もいれば、実力者はさらに上のクラスへというピラミッド型。軍隊のような組織をつくりメダルを量産しているのだ。

 さらに金戸氏は「馬淵コーチはメダルを獲らなければ予選を通っても、仕方がないというぐらいの気持ちなのでは」と見ている。メダルを獲得するための武器、109C。予選で出した高得点は一発逆転の可能性を見せた。安定性に欠くものの、板橋が本気で目指しているのは20年東京五輪での金メダル。技術スポーツでもあるため15歳の板橋には「キャリアが足りない部分もある」。超大技で体全体を駆使するため負担も大きい。それだけに「体を壊さないことも大事」である。

 世界選手権のデビュー戦ながら、109Cを成功させた事実が、飛び込みでは日本人初のメダルの可能性を感じさせた。

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2015年7月30日のニュース