浅見復活V!近藤との新旧女王対決制した「道は自分で切り開く」

[ 2015年4月5日 05:30 ]

決勝で近藤を攻める浅見

柔道 全日本選抜体重別選手権第1日

(4月4日 福岡国際センター)
 女子48キロ級で浅見八瑠奈(26=コマツ)が“新旧世界女王対決”を制し2年ぶり2度目の優勝を飾った。決勝では昨年の世界選手権を制した近藤亜美(19=三井住友海上)から体落としで有効を奪って優勢勝ちを収めた。ロンドン五輪では失意の代表落ちを経験。来年のリオ五輪に向けて再起した元女王が、8月の世界選手権(カザフスタン)の代表入りを確実にした。5日の大会終了後には最重量級を除く男女計12階級12人の代表選手が決定する。

 どちらも世界女王に輝いた実力と実績がある。26歳の浅見には経験があり、昨年頂点を極めた19歳の近藤には勢いがある。優勝候補同士が順当に勝ち上がった決勝戦。2人の均衡は残り1分3秒で崩れた。

 細かく、素早く動きながら、浅見の右足がするりと伸びる。「足が出ている時は調子がいい時。練習から意識していた」。虚を突く体落としにバランスを崩されて近藤が倒れた。指導を受けていた浅見はこの有効で逆転。昨年12月、グランドスラム東京の決勝で敗れた19歳にリベンジを果たし、世界切符をたぐり寄せた。

 3年前、ロンドン五輪代表入りを有力視されながら、この大会で初戦敗退を喫してまさかの落選。現役は続けたが、気持ちは吹っ切れていなかった。一昨年の夏から約1年間の休養。その間に柔術を習ってみたり、1カ月のフランス留学も経験。違う角度から柔道を見つめ直し、リオ五輪に向けて再起を決意した。

 それでもまだ迷いはあった。「新しい自分として取り組むのか、以前の自分を取り戻すのか」。2月のグランプリ・デュッセルドルフ大会では3位。敗れてさばさばとしていた浅見に、五輪2大会連続金メダリストでコマツのコーチでもある谷本歩実氏はこう言った。「ロンドンの代表争いで負けた時はこんな顔してなかった。あの時の自分を取り戻そう」。勝利への執念。五輪への執着。その言葉に浅見は「本当に必死だった」自分への原点回帰を決めた。

 動きの鋭さと試合勘は1年間のブランクを克服しつつある。「これからも近藤選手との代表争いになる。今回練った対策はあまり言いたくない」。2人目の枠で近藤も代表に選ばれる可能性は残っており、手の内はまだ隠したままだ。リオ五輪代表を争う2人の天びん。「道は自分で切り開くしかないと思っていた」という浅見の側に今回はかたんと傾いた。

 ◆浅見 八瑠奈(あさみ・はるな)1988年(昭63)4月12日、愛媛県伊予市生まれ。3歳で柔道を始め、伊予柔道会で腕を磨く。講道館杯や選抜体重別で優勝経験のある父・三喜夫さんが監督だった新田高から山梨学院大に進学し、コマツに入社。世界選手権では10、11年と連覇し、13年は準優勝。得意は背負い投げ、体落とし、袖釣り込み腰。右組み。1メートル53。

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