白鵬、笑顔なきV 記録更新34度目&2度目6連覇も“無”の表情

[ 2015年3月23日 05:30 ]

神妙な表情で賜杯を受け取る白鵬

大相撲春場所千秋楽

(3月22日 大阪・ボディメーカーコロシアム)
 東横綱・白鵬(30=宮城野部屋)が14勝1敗で、自らが持つ史上最多記録を更新する34度目の優勝を決めた。大鵬以来2人目となる2度目の6連覇も達成。1敗で単独首位に立って迎えた結びの一番で横綱・日馬富士(30=伊勢ケ浜部屋)を寄り切り、ただ一人2敗で追った新関脇・照ノ富士(23=伊勢ケ浜部屋)を振り切った。白鵬は1月の初場所後に勝負判定への不満から審判部を批判。物議を醸して迎えた中で報道陣に無言を貫いた一方で、場内での優勝インタビューでは思いの丈を語った。

 白鵬にとって34度目の表彰式。土俵上で賜杯を抱いても優勝旗を握っても、かたくなに“無”の表情を貫いた。審判批判騒動の影響から15日間支度部屋で言葉を発することはほぼ皆無。しかし、続く館内での優勝インタビューで沈黙を破った。

 喜びを抑えた穏やかな口調で「どうもありがとうございます」と感謝を述べ「初場所で新記録を達成し、それにふさわしい優勝。満足できる内容が多かったので、それを信じてやりました」と自賛した。その後、今場所に臨む思いを問われ、自ら騒動について切り出した。「いろいろ騒がせましたけど…」。言葉に詰まって沈黙すると、館内からは拍手が湧き「頑張れ!」と温かい声が掛かった。20秒ほど間を空け「まあ、頑張ります」と短い言葉で前を向いた。

 モヤモヤを吐き出し終えると「一つ、二つ上にいったような相撲内容だった。いろいろなものにとらわれず、自由にやっている気がする」と柔和な表情に戻り、1差で追いかけた照ノ富士について「近い将来いいところにいくような気がします」と期待した。ライバルになるかどうかを聞かれた際には「すぐにそういうこと言うからね」とインタビュアーにぼやく余裕もあり「お互い頑張っていきたい」と誓った。

 相撲内容は圧巻だった。格下には鋭く低く、前に出る相撲を貫き、実力者の豪栄道と稀勢の里には受ける立ち合いで相手の隙をうかがい、さばいた。勝てば優勝だった千秋楽の日馬富士戦は十分な形をつくられて棒立ちとなったが、力でねじ伏せて体勢を入れ替えて、最後は万全の寄りで2分を超える相撲を制した。

 前人未到の領域を突き進むが、問題発言を批判した報道陣には2日目から支度部屋で背を向け続けた。生中継でテレビカメラが入ったこの日は報道陣に正対して座ったものの、大いちょうを結い直す間の質問に目を閉じて無言を貫いた。優勝後も取材に応じない初の異常事態。宮城野部屋の関係者は「本当は話したいと思っているだろうけど、タイミングを失ったので無理だ」と話した上で「誰か本人に“話せ”と言ってくれるような人がいれば」と的確なアドバイスをする存在がいないことを明かす。

 北の湖理事長(元横綱)は「相撲が始まったらいろいろ考える余裕がないですよ」と横綱を思いやったが、周囲には「一回後ろを向いたものは戻れないよ」と漏らしている。振り上げた拳は簡単に下ろせない。ストレスを抱えつつ、つかみ取った笑顔なき優勝はどれだけ続くのだろうか。

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