山の神野!5区で“伝説”柏原超えで青学大97年目の初V

[ 2015年1月3日 05:30 ]

トップでゴールし雄叫びを上げる青学大・神野大地

第91回箱根駅伝

(1月2日 東京・大手町~箱根・芦ノ湖、往路5区間107・5キロ)
 “山の神野”が山上りの5区に降臨した。1区から上位でたすきをつないだ青学大は、5区初挑戦の神野大地(3年)が10キロすぎに駒大を逆転しトップに立った。コース変更で20メートル長くなった区間で山の神と呼ばれた柏原竜二(現富士通)の区間記録を上回る1時間16分15秒をマーク。2位の明大に約5分の大差をつけ往路初優勝に導き、初の総合優勝も射程に捉えた。

 山の神はいなかった青学大だが、山に神野がいた。近年の箱根は最長距離の5区、山上りを制したチームが勝ってきた。戦前は花の2区が注目された今回もそれは同じだった。

 「往路のゴールテープを切る場面をずっと想像していた。夢かなと思うぐらいうれしい。本当に楽しく走れた」。原晋監督が「超人」と驚嘆した力走。創部97年で青学大創立140周年の記念の年。雪解け水できらきら光る箱根路に、フレッシュグリーンのたすきがまぶしく輝いた。

 最初の5キロは14分45秒で予定より35秒も速いペースだった。しかし、原監督から「調子がいい証拠。自信を持っていこう」の声をかけられ背中を押された。たすきを受けた時点で46秒差だった駒大・馬場に追いついたのは10キロすぎ。少し並走して相手の余力を見極めると、すぐに突き放した。

 中学時代は県大会に出たこともない無名選手。3000メートルの持ちタイムは10分27秒で、女子にも劣るような遅さだった。それが中京大中京高の小田和利監督に誘われ「継続していれば力はつく」と言われ続けた日々の練習で力を蓄えた。花開いたのは大学に入ってから。1年時は当時のエース出岐雄大(現中国電力)と相部屋で競技への姿勢を学び肉体強化にも自主的に取り組んだ。さらに青学大では今季からアディダス契約アドバイザーの中野ジェームズ修一トレーナーの指導で体幹などのコア・トレーニングも導入。入学時39キロだった神野の体重は43キロに。軽量に変わりはないが、天下の険に挑む足取りは誰より力強かった。

 坂道に苦手意識もあったが「主力の誰かが5区に行かないといけなかった」と責任感で引き受けた。「陸上ができなくなったら自分の人生は終わる。我慢強さは柏原さんよりも上」と言うほどの気持ちの強さも備えている。「彼は粘りが身上。おごらずにコツコツやっていく模範生」という原監督は、そこに神野の山への適性を見いだした。

 18キロすぎのフラワーセンター付近で、神野は応援に来ていた両親、兄を見つけて小さくガッツポーズを送った。「母はもう泣いてました」。そこから最後のひと踏ん張り。頭に刻んでいた柏原の区間記録のラップタイムを思い出し、芦ノ湖までを一気に駆け下りた。

 この日の招集所では「じんの」と間違われ「絶対にここでいい走りをしてやろうと思った」と苦笑いした。これからは間違われる心配もない。「山の神かどうかは皆さんに決めていただくこと。そうなれたらうれしい」 山の神野。その名前は箱根の山から日本中に知れ渡った。

 ≪5、6区走路変更≫5、6区の走路にあたる函嶺(かんれい)洞門が老朽化で昨年2月6日から通行禁止になり、新たに敷設されたバイパスを使用。5、6区の区間記録、往路・復路・総合記録は、第91回大会以降の記録を新規の記録とし、第90回大会以前の記録は参考記録となる。

 ◆神野 大地(かみの・だいち)1993年(平5)9月13日、愛知県津島市出身の21歳。中京大中京高3年時に高校総体5000メートルに出場も予選落ち。昨年11月・全日本大学駅伝は8区区間3位。ハーフマラソン1時間2分42秒は青学大最速。験担ぎにレース前にだんごを食べる。名前はソウル五輪100メートル背泳ぎ金メダリスト鈴木大地からつけられた。1メートル64、43キロ。

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2015年1月3日のニュース